『教室自爆クラブ』は原作 アオイセイさん、作画 アナジロさんの作品。アナジロさんの絵はモノクロが映える魅力的な絵で冒頭から惹きつけられます。
3年前の12月に、いじめられていた聖の自爆によってほとんどのクラスメイトと体の一部を失った7人は事件のあった教室に集まります。そのうちのひとり拓己は、この7人の中に、あの日の聖に爆弾を渡した人間がいる、と切り出します。
同時刻、ある私立校で、体に爆弾をまきつけた睦美は、クラスメイトと先生に「みんな私と死んでもらう」と宣言します。
ここから先はネタバレなのでご注意ください。
結論を言うと聖に爆弾を渡したのはかえで。かえでは生き残った7人も死ぬべきだったと、殺戮を開始します。一方睦美も容赦なくクラスメイトを対立させ人質をとりながらも殺戮も行います。睦美を焚き付けたのもかえで。睦美は警察も読んで世の中の注目を集めます。最後に茜を伴って警察の前に出て狙撃をうけて事件は収束。拓己の事件もかえでが自ら命をおとして日菜と拓己が生き残ります。
それからも繰り返されるいじめ被害者による爆弾を使った復讐。世の中では自爆による復讐を恐れていじめが減ったように見えますが、睦美の事件で生き残った茜は誤情報から激しいいじめをうけるようになっています。
教室自爆を主導していたグループの首謀者はある少女。自爆テロを行うことでいじめが沈静化していることを喜ぶ自爆クラブのメンバーたちだが、少女はうそぶく。いじめは絶対なくならない、と。
いつもそうなのですが、内容は相当端折っていますので、未読の方は読んでいただけるとすごく嬉しく思います。既読の方はへえ、こんな読み方する人もいるんだな、と流してくださったら嬉しいな。
拓己は3年前の事件で、誰よりも大切な友人、彩夏を失くします。そのため、この3年間、何故聖が自爆テロを起こしたのか調べてきたし、自爆という形で問題を解決、あるいは問題を提起しようとしたかえでが許せず、復讐では何も解決できないと語り合いたかったのです。拓己にとって彩夏が何故大切な存在だったのかもきちんと物語に描かれています。
一方で、アクシデントに近いかたちで睦美の復讐対象の一人に選ばれた茜は、実は睦美からみたときに唯一いじめから助けてくれようとしたクラスメイトで、睦美は実は茜に感謝していたのでした。それだけでも悲しい話なのですが。でもそれは睦美と茜だけが知っていることで、茜は睦美いじめのきっかけをつくった諸悪の根源との誤解が広まって虐められてしまうのです。すごく理不尽でつらい話になっています。
自爆テロを推進していじめを抑制しようとしているグループの活動と、そのリーダーの「いじめは絶対なくならない」というセリフは重くて、どうしてこんな世界になっちゃったんだろう、と思います。前にも書きましたが、私が小学生のころに「いじめ」という言葉が一般化してきました。その前は多分、ガキ大将ともやしっ子みたいな捉え方だったのではないかと思います。でも、藤森治見さんの『美醜の大地〜復讐のために顔を捨てた女〜』だと終戦直前直後でもひどい組織的いじめをしてましたけど…でもあれは今の漫画だからなんとも言えないか。
違う場所で発生する事件を並行して描いていくお話は好きです。さらに、時間がシャッフルされているのも好きなので、この作品はかなり好きです。最初にも書きましたが、モノクロのメリハリが美しい画面も大好きです。ただ、茜へのいじめは今までのいじめと全然種類がかわらないので、そこがちょっと弱かったかもしれません。もっと陰湿で巧妙ないじめになると、教室自爆クラブの功罪が(いや、功はほんとはないんですけど)ハイライトできたのではないかと思いますが…難しいですよね。