adabana 徒花

『adabana 徒花』はNONさんの作品。上中下の3巻から成る読み応えのある重たい作品です。

私は女性が性的に搾取される話が苦手です。嫌いとはちょっと違うのですが、重すぎて受けとめきれないことが多いのです。でも、少女同士の友情の話は重い話でも好きです。そんなわけで、この作品も夢中になって読んでしまいました。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

adabana 徒花 NON 集英社

ミヅキは厳しい教育ママに管理されている少女。同級生のマコは病弱な父を抱え叔父の店でバイトをしている美少女です。明るく振る舞っているマコですが、実はマコは叔父に卑猥な写真の撮影を強要され、売られていました。

マコにはイケメンの大学生の彼氏、暁がいますが、彼もマコとの性行為を盗撮し、叔父と一緒に儲けていたのでした。

マコで物足りなくなった叔父はミヅキのレイプ画像を撮ろうとします。抵抗する中にマコも現れ、叔父は殺され、遺体は破棄されます。ここの描写は巧妙でミヅキとマコのどちらが叔父を殺したかは不明瞭です。

叔父の不在を疑った暁はマコを追い詰めます。お前の父親もお前の動画の販売に一枚かんでる、お前は俺に食い物にされてボロボロになっていきていくしかないんだ、と言われ絶望するマコ。

ミヅキは暁のナイフを胸に刺して倒れているマコを見つけます。マコの首と手首を切り取ったミヅキは暁にマコの手首を見せ、自分が犯人として自首すると暁に伝えます。ナイフの話を持ち出して「私が自首する前に証拠を消して」と言い残して自首します。

ミヅキの親は犯罪をおかした娘に冷淡で、ミヅキには国選弁護士がつきます。誠実な弁護士は同僚の女性にサポートを依頼します。この女性は熱血で、マコとミヅキの境遇に同情し感情移入します。二人は最大限ミヅキを支えます。

公判に出たミヅキは叔父の殺害を認めますがマコの殺害は否定し、暁をかばっていたと証言します。凶器のナイフのことを持ち出して、ダークなイメージを暁につけることに成功します。世間の好奇の目にさらされる暁。結局ミヅキの叔父の殺害は正当防衛が認められますが、マコの殺害では有罪となり実刑判決を受けます。

時が経ち、出所したミヅキを弁護士が迎えます。暁の人生は崩壊しており、弁護士はそれがミヅキの復讐だったのかと尋ねますが、ミヅキはマコを守りたかっただけ、と答えます。

弁護士はミヅキの願いに応えてミヅキを遊園地へ連れ出します。ここはマコとミヅキが、受験が終わったら来ようと約束していた場所。気を利かせてミヅキを一人にする弁護士。ミヅキはいないはずのマコと出会います。しばしの時を過ごす二人。そして、ミヅキはマコに別れを告げます。

絵がとってもきれいです。マコがかわいくて、マコの過酷な人生と合わせて考えると、本当にかわいそうでなりません。叔父にも父親にも彼氏にも搾り取られるだけ取られ、誰にも大切にされないマコが気の毒でなりません。それなのに、ミヅキと一緒に楽しそうにお弁当を食べる姿は無垢な少女そのもので、愛しくて仕方ありません。

叔父がミヅキをレイプしようとしたり、暁がミヅキまでも毒牙にかけようとしていたり、いままでずっと支えてきた父が実は裏切っていたり、マコの絶望はどんなに深かったでしょう。マコの美貌と笑顔だけ見ていればこれから先幸せな人生だけが待っていそうなのに。

そんなマコを助けたれなかった、でも自死を選ぶしかなかったマコを守ることだけを考えて、犯してもいない殺人で自首し、両親からも縁を切られたミヅキのひたむきな思いにも涙が出ます。ミヅキにはこれから、親友を殺して首を切断した猟奇殺人犯として生きていくのかと思います。そうまでして守ったマコとはもう二度と会うことがないし。すごくつらい。悲しい。苦しい。

本当に、マコのそばの男たちは最低で、思わず男性をにくんでしまいそうになる話なのですが、国選弁護士さんがどこまでもミヅキに寄り添い、弁護するだけでなく、出所したあとに遊園地まで一緒に行ってくれる姿に、そうだ、男性が悪いわけじゃないんだ、悪い男性もいるということなのだ、と我に返らせてくれます。

NONさんは『ハレ婚』で有名な作家さんのようです。Renta!の『adabana』の感想でも、NONさんだから読んだ、というコメントが多いように思いました。実は、『ハレ婚』は1巻だけ読んだのですが、あまりはまりませんでした。私の好みだと、男女の恋愛や結婚に関連したお話よりも、少女の熱くて複雑な友情やサスペンスのほうが好きなのかもしれません。少年の話も好きですが、BLはわりと苦手です。BLもプラトニック系だと結構好きなのですけれどね。

あ、話がめちゃくちゃそれちゃいました。普通で考えたら、マコが過酷な境遇から抜け出すことができるのが一番よかったのですけれど、今回は自分の人生を犠牲にしても、マコを単なる自殺にせず、守ってあげたかったミヅキのお話ということで、読んでハッピーにはなれなかったけど、とても満足度高かったです。

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adabana 徒花 (上)

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[著者]NON

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