モンクロチョウ

『モンクロチョウ』は日暮キノコさんの作品です。高校生です。見た目も悪くないしチャラ校にいるのに、何故かいけてない男岡部の青春物語です。

幼馴染の桃子は子供の頃からぽっちゃりで発育がよく、生理がきたのも早めでした。桃子に生理がきていることに気づいたときから岡部は女性恐怖症になります。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

モンクロチョウ 日暮キノコ 講談社

とはいえ、なんだかんだでセフレのリサができ、劣等感をなだめすがしていた岡部は、桃子と久しぶりに会います。ぽっちゃり系の桃子に優越感を持って接する岡部でしたが、桃子が経験済みと聞いてまた劣等感がぶり返します。

ひょんなことで親しくなった漫画好き同級生の山口に、リサのセックスを除き見させてデッサンさせることで岡部は優越感を得ます。やっと順風満帆生活が始まったかと思うと、痩せて美しくなった桃子が再度現れます。ヤリチンのイケメンがすっかり桃子の虜になっているのを見た岡部の劣等感はまたぶり返します。岡部をモデルにして漫画の賞を獲得して喜ぶ山口を、岡部は手ひどく傷つけることでプライドを保ちます。傷つけられて岡部の足を鉛筆で刺した山口は立ち去り、岡部はリサを呼び出します。そのまま公園でセックスしたあと、リサは岡部の元を去ります。

桃子はTVにも出演しタレントとして活動を始めますが、岡部をヒーローとして見ていたただの桃子に戻りたくなります。ホテルで撮影のある日、桃子は意味ありげにホテルの名刺を岡部に渡して去り、岡部はまんまとホテルに行って桃子を連れ出します。二人は幼い頃の思い出の場所に行きます。照れ隠しに桃子を見下す岡部に、桃子は「あなたにとって私はただひとりの女でも、私にとってあなたはそうでもないよ」と本音をぶつけます。桃子の失踪は写真週刊誌に撮られ、桃子の人気は逆に沸騰します。

それから5年、山口は売れっ子漫画家として成功。リサは銀行員として頑張り、岡部は二流大学の学生として生活しています。桃子との思い出の場所を訪れると、またぽっちゃりに戻った桃子が現れます。あの頃は人に傷つけられたら誰かを傷つけることでしかリカバーできなかったと話し、いい雰囲気になる二人。岡部と別れると桃子は結婚指輪を改めてつけ直し「少しは優しくなれたかな?」と明るくつぶやくのでした。

この作品は、1巻表紙の雰囲気とタイトルに惹かれ、若干ホラーかサスペンスものを期待して読みました。

私は小学生の頃は男子にまったくモテず、中高は女子校で親戚以外の男性とまともに会話したことがなく、若い男女の心の機微がまったく分かりません。だから岡部が小学生時代の桃子に圧倒されたり、セフレを持つことや同性の友人を見下すことで自分の中の劣等感を克服するというのがいまいち理解できませんでした。岡部は性慾に振り回されているように見えました。ただの幼馴染だったはずの桃子とセックスして桃子のくせに、と思うのも、そんな桃子が痩せてキレイになってトップオブチャラ男が桃子にぞっこんになっているところで、桃子がカレーにミルクをかけるのを知っているのは俺だけ、と優越感にひたるのも、それは思い込みで桃子はもうカレーにミルクをかけないのだと知って喪失感を抱くのも、山口にリサとのセックスを除き見させて満足するのもよく理解できなかったし、その山口が漫画で賞を取ったら一気に追い詰められて、山口をバカにして見せることで自分のバランスを取るというのも理解できませんでした。

まったく分からないだけに、初めて読んだときには圧倒されました。

そうなんだ、そういう複雑な心の機微があるんだ、なるほどおもしろいー、というのが素直な感想です。

チャラ男集団で必死に背伸びして自分もチャラ男に見せようと擬態している劣等感男を見つけて興味を持ったリサの気持ちはちょっとわかるような気がします。リサは結局岡部に惹かれていたのだと思うのですが、惹かれてる男とセフレ関係になっちゃうのはいまひとつ分かりにくくて、もしかしたら私はこの作品を正しく理解できてはいないのかもしれません。

桃子との関係も、桃子が意外とビッチだというのも、正しく読み切れているのかどうかわかりません。

で、「正しく読む」って何だろう、と引っかかってしまいました。私の場合は思春期に異性と話をすることがなくて、極端にいえば男性は女性とは別の生き物と思ってしまうほどの環境にいたから、話を的確に捉えられていないと見るのか、それとも、青春時代の心の機微は人それぞれ、どんな作品で作者が何を描こうとしていてもそれは作品の品質には関係はなく、読者は作品を自由に解釈して、自由に感想を述べるべき、あるいは捉え方が作者さんの意図とは違ったとしても、それも含めて作品なのだ、と広い受け止めが必要なのでしょうか?

最後に桃子と会ったとき、岡部も少しは桃子に優しくなれたのでしょうか?それとも、まだ大学生なりの岡部として、やっぱり自分のことだけ考えていたのでしょうか?

相手に対する思いやりや冷静な分析とかなく、ただ自分と向き合ったり目をそむけたりマウントしあったり。よくある恋愛物語とはちょっと違う青春モノ。偏った青春を送った私にはちょっと難しかったけど、面白かったです。

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モンクロチョウ 1巻

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[著]日暮キノコ

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