RISKY~復讐は罪の味~

『RISKY~復讐は罪の味~』はたちばな梓さんの作品です。自殺で姉を亡くした妹、ひなたが、姉の元彼とその現フィアンセに近寄り、陥れようとします。

ひなたは姉のかなたの自殺の原因は、妊娠中に階段から落ちて流産し、恋人の亨に棄てられたことだと思っています。

ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

亨のフィアンセの名前は美香。実際、美香はかなたから亨を略奪しようとしていたときにかなたの妊娠を理由に亨に結婚をしぶられます。そこで美香は、かなたを階段で突き落として転ばせ、流産させます。美香はキラキラ系女子で(SNSに精を出す姿はありませんが)、亨との結婚を焦っています。美香は必ずしも亨を好きなわけではなく、一流商社に勤める亨との将来の安定した生活を手に入れることが結婚の目的です。

ひなたは幼馴染の光ちゃんと組んで亨と美香を苦しめようとします。ひなたが亨を誘惑すると亨はあっさりと落ちます。光ちゃんとひなたは、美香の家には子供のエコー写真を置いて美香を混乱させます。ひなたがそこまでかなたの復讐を思い詰めているのは、2人は早くに両親を亡くし、肩を寄せ合って生きてきたかけがえのない姉妹だったからです。

そんな中、亨の上司の家で職場の一同を集めたパーティがあります。度重なるエコー写真やかなたを名乗る電話に追い詰められた美香は、上司の孫の泣き声に取り乱して醜態を晒します。もともと冷え込んでいた亨の美香への気持ちはさらに冷たくなります。

亨はフィアンセの失態で海外に左遷されることになります。そこにライバル企業を装った光ちゃんがヘッドハントの話を持ちかけ、手土産に顧客情報の持ち出しを示唆します。

ひなたに心を奪われ左遷とヘッドハントの話で判断力を失った亨は転職を考えます。美香は亨にすてられまいとしつこくつきまといつつひなたのことを調べて復讐への復讐を試みます。ひなたを集団レイプさせようというのです。しかし、ひなたの機転でこの企ては失敗し、美香は逆ギレした男たちに襲われます。

亨は結局左遷を選び海外赴任についてきて欲しいとひなたを誘いますが、ひなたはそこでじぶんがかなたの妹で復讐のためだけに亨に近づいたことを告白して亨を傷つけます。

復讐を果たしたひなたのもとに死んだ姉から手紙が届きます。そこには、かなたが本当はひなたを憎んでいたことが綴られていました。親を亡くしたとき、かなたは新人の社会人でひなたは学生。かなたはひなたを守って生きていましたが、ひなたのために諦めることも多く、守られて当然のように振る舞う妹への憎悪を募らせていたのでした。

ショックをうけたひなたは取り乱して事故にあい、意識を取り戻したときには自分をかなただと思い込み、ひなたの存在を闇に葬り去ってしまいました。

ひなたを深く愛する光ちゃんは、いつまでもひなたに寄り添います。こうして復讐は虚しく幕をおろしたのでした。

本編のあとに後日談として、美香が前向きに亨との仲を解消したこと、ひなたが記憶を取り戻して光ちゃんと幸せな家庭を築いていることが描かれます。

この作品とは、Renta!以外のサイトで巡り合いました。以前に『死神ドール』の感想を書きましたが、私は死神ドール以来、すっかりたちばなさんのファンになっていたので、心を踊らせて読みました。

他サイトでは、ヒトコマずつ見せる、Renta!でいうところのタテコミの形式で配信されていたこの作品、以下のコマが象徴する悪女美香の嫌われキャラとドロドロがかなり評判になった人気作品になっていました。

私はマンガはページ構成、コマ割りも含めて楽しみたい派なので、タテコミにはフラストレーションがたまってしまいました。Renta!で読めるようになってからは大喜びで読んでました。

私にとっての一番の魅力はひなたの顔、特に目、次が美香の顔です。正直、絵面をみているだけで相当満足です。同じシーンを、絵をみたいがために何度も何度も見返してしまいました。

ドロドロのお話も後をひきます。復讐がどうなされるのかが気になって、他サイトで先行配信されたのに気づくと、Renta!で次の号を読むのが楽しみ楽しみで仕方ありませんでした。

絵は大満足ですが、お話自体はちょっと「?」と思うところもあります。大好きなたちばな先生が爆売れした作品なので批判するつもりはないのですが…

この手のお話の最大の魅力は、敵役のキャラにあるといってもよいでしょう。そして、この作品でも美香はとても魅力的です。ときに絵のバランスが崩れかねない分厚い唇も美香の魅力です。性格悪くて、匂わせで、夫との記念日にはお風呂にバラの花びらを浮かべて高級グラスでシャンパンを飲みたいというスノッブなところもあり、職場で男に媚びて女性社員には嫌われてるけど女性に面と向かって感じ悪く振る舞いはしない女で、好感度は超低いのに、つい目でおいかけちゃうキャラです。こんな子が同僚でいたらたまったものではありませんが、漫画での敵役としては完璧です。

ひなたの存在を興信所で調べて復讐に集団レイプさせようとする胸糞悪いところも、美香らしくて最高でした。結局それが成功しなかったハライセに乱暴されちゃうのはかわいそうでした。美香を大切にしてくれないママがいるのもかわいそうでした。

でも、この作品、復讐の本丸のはずの亨のキャラが弱いのです。一見いいひとの皮をかぶっているのですが、長年付き合っていたかなたという恋人がいるのに美香とできちゃったり、なのにかなたが妊娠すると態度をかえてみたり、美香への愛が冷めてるのに別れずにいて、ひなたにも手をだしちゃうとか、普通に最低男なのに、キャラが弱いせいで、亨が左遷されてもざまみろ感がなんか薄いんです。亨に対して「自業自得じゃん、バーカ」と手放しで言えないところは、この作品の魅力でもあり、話の肝だとも思うので、亨がイヤな男だったりするとお話のテイストが変わってきます。だからこのキャラしかないんでしょうけど…もうちょっと仕事はできるいい男だとか、彼女と蜜月の間はちゃんと誠実なんだけど魔がさしちゃうタイプだとか、亨がいい男の部分もあるというエピソードが欲しかったところです。まあ、亨がしっかりかなたの手を握ってかなたを幸せにしてくれていれば、こんな事件は起きなかったので、玉の輿を狙う美香にうんざりしているけど別れていない状態は、自然な流れでなったのだと想像はできますが。

光ちゃんは自分が誰よりも愛しているひなたの、復讐する気持ちに同調していつまでも寄り添うというストイックさが魅力です。誰よりもひなたを愛していて、ひなたにまた会いたい一心でかなたになりきったひなたを支えていくのも感動的です。それであれば、ひなたが亨への復讐のために自分の体を使っていることについて、もっと葛藤しててもよかった気がします。光ちゃん、はっきり言ってずっとかわいそうだった。後日談でちゃんと愛が通じて幸せになれて嬉しいです。

美香は…美香の目論見と性格からいって、亨が左遷された時点で理想の彼氏ではなくなっているので、さっさと別れて焦って次の男を探すけど、自分もだんだん若くなくなっていって焦りがおおきくなるので男から見たあざとい魅力も減ってきて、仕事も腰掛けでやってきたのが祟って会社に居づらくなっても転職もうまくいかず、結局落ちぶれる、というほうが復讐になったんじゃないかと思います。そうするには、美香があまりにも敵役として魅力的になっちゃったので、作者さんも読者もそんな結末は望めず、心機一転、変わった(と想像させる)結果になったのでしょうか。美香は顔が好きだったので、私はこの結果には満足ではありますが、「赤ちゃんはもちろんかなたを殺す」可能性もあった略奪手段をとっていたことを考えると、ただのちょっとかけちがっちゃっただけの娘さんではないので、処遇がやや甘い気がしないでもないです。

でも、悪いのは、かなたと美香の間で二股かけてずるずるしてた亨だし、美香への愛が冷めてるのに別れなかった亨だし、美香がいるのにひなたにも手を出した亨だし、美香の感情も美香との関係も不安定なのに美香を上司宅の大事なパーティに連れていった亨だし。亨のばーか。というお話でした。

ちなみに、「復讐は罪の味」というサブタイトルは、「砂糖は甘い味」と言っているような感じなので、サブタイトルにもう一捻り欲しかった気もしますが…捻りのないストレートさがこの作品の魅力のような気もしてきました。

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