死神ドール THE FRIEND DOLL

『死神ドール THE FRIEND DOLL』はたちばな梓さんの作品です。1話完結のシリーズで、すべての話にお人形がでてきます。

人形はお話の中で重要な役割を果たします。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

死神ドール たちばな梓 講談社

たとえばあるお話では、優等生の主人公、幸がぬいぐるみのミミに殴る蹴るの八つ当たりをすることで日々のストレスの発散をしています。ある日ミミが夢に出てきます。かわいい少女の姿をしたミミは、幸が好きな男子、坂下くんと近づくコツやテストのヤマを教えてくれます。気をよくしていた勉強をしなくなってメイクにうつつをぬかすようになった幸に坂下くんの彼女が腹を立て、テストのカンニングペーパーを幸のペンポーチに仕込みます。その日に限ってミミが夢に出てこず、勉強もしていなかった幸はリベンジに受け直しさせてもらったテストで38点しかとません。カンニングの汚名をきせられ両親にも怒られた幸はミミに怒りをぶつけます。

するとミミはほとぼりが冷めるまでの入れ替わりを提案します。ミミの提案に従った幸はミミの中に閉じ込められます。するとミミは今までの優しい態度をころりと変えます。ずっと八つ当たりで乱暴されていたミミは幸と入れ替わるチャンスを伺っていたのでした。殴られれば痛みを感じ、動くこともできず、幸は後悔します。

1カ月、夢の中で謝り続け元に戻して欲しいと願い続けた幸に、ミミはいいわ、と応じます。ところが、体を取り戻した幸の目の前にあったのは血を流して倒れている坂下くんの彼女。そして幸の手には血のついたナイフ。警察に連行される幸の目の前に少女の姿のミミが現れ、あれくらいで許すと思ったの、あなたはあなたの人生を歩きなさい、と冷笑します。

このお話は因果応報ですが、必ずしもそうでなく、4話それぞれ違った展開を楽しめます。ミミ以外の人形は基本的に美しい少女の人形です。後味の悪い終わり方のものがみっつ、本命でないと思われていた人形(マスコット)に助けられるお話がひとつあります。

この漫画に惹かれたのはズバリ、絵です!最初に読んだのは、少女向けホラーのアンソロジーで、でした。特に、上に紹介した話のミミが少女になったときの顔と、ミミが幸と入れ替わった瞬間の顔が大好きで、顔が見たくて何度も何度も読み返してしまいました。ワガママな幸自身の、ワガママさが滲み出る表情もすごく好きです。他の話でも、とにかく女の子の顔、特に目が大好きです。アンソロジーでこの単行本に掲載されている4作中3作を読んでしまったのですが、どうしてもまとめ読みしたくて単行本も買ってしまいました。

この作品は2013年のもので、ちょっと古く、その後のたちばなさんはホラーではなくぶっちゃけ系の作品をいくつか描いていらっしゃるようでしたが、2018年には『RISKY〜復讐は罪の味〜』という作品を描いて、ドロドロのワイドショー的ストーリーがかなり話題になったようです。私の場合、RISKYは、ヒーロー(?)のことをどうしても好きになれず、ダブルヒロインたちの性格もちょっと難ありだと思っていましたが、そのダブルヒロインの顔が好きで好きで、顔だけに惹かれて結局全話読んでしまいました。(そのうち感想も書くかもしれません。)

きらびやかで表情豊かな女の子に対して、男性がちょっと印象に残りにくいのがもしかしたらたちばなさんの弱点かもしれません。そのせいなのか、おそらく小学生を主なターゲットとした少女向けホラーという枠組みのせいなのか、『死神ドール』でも少年たちの影は薄いところがあり、主役はあくまで少女と人形です。第4話では少年がお話の中心ですが、彼を想う少女のほうが主人公っぽい感じでした。

小学生向けのホラーは好きです。あんまり怖すぎなくて、お話がわかりやすいところが好きです。私のホラーの基本は今市子さんの『百鬼夜行抄』なので、なかよしやちゃおなどに掲載されていた少女向けホラーは、いろんな意味でギャップがあって楽しめます。Renta!の読み始めはアンソロジーを30冊近く読んでました。難しいことを考えずに楽しもう!怖がろう!と思って力を抜いて素直に読むのがオススメです。絵が可愛かったり、ストーリーが素直だったり、登場人物が魅力的だったり、シンプルながら何度も読めるようにお話がしっかりしてたりして、小学生向けに描かれているものもしっかり楽しめるな、と思ったものでした。

ホラーもので味をしめて恋愛ものの少女向けアンソロジーも読んでみたんですが…やっぱり小学生向けの恋愛ものを大人の女性が楽しむには無理があったのか、たまたまか、あんまりささりませんでした。

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[著]たちばな梓

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