爪痕ーそれでも結婚、続けますか?ー

『爪痕ーそれでも結婚、続けますか?ー』は原作 ななしなあめ子さん、作画 石川オレオさんの作品です。なつきとサヤカは高校時代からの親友。二人とも結婚していて、なつきには娘のゆいがいます。サヤカはまだ子供がいません。

なつきの夫は高校のときに告白されてつきあい始めたコウスケ。サヤカの夫はトモキ。

ここから先は、ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

トモキは浮気性で、次から次へと女を作っていますが、全て遊び。大切なのはサヤカだけです。サヤカは怪しいとは思っていますが、決定打はなく気づいていません。しかし、トモキのカノジョの伊藤はトモキに本気になり、次のカノジョに嫉妬し、その存在をサヤカにばらします。

コウスケは、高校時代から一途に自分を思ってくれていたしおりと不倫し、本気になってしまいます。別れて欲しいと言われて動揺し、拒否するなつき。一度は家を出たコウスケでしたが、ゆいが事故にあったことをきっかけになつきのいる家に戻ります。

日々を過ごすうちに、自分を愛していない男を縛りつけておくことがむなしくなったなつきはコウスケと別れようかと気持ちがうごきますが、コウスケの不倫相手がしおりで、しかも妊娠していることを知り、怒り狂って「離婚しないこと」を二人への報復とします。実はしおりはなつきの友人でもあったからです。

サヤカはトモキの浮気を知るとキッパリ別れようとしますが、そのタイミングで妊娠が発覚します。別れたいサヤカですが、両親や姑、そして何よりトモキにうまく引き止められ、離婚することができません。

コウスケは家を出てしおりと暮らし始めます。始めはそれだけで十分幸せだと思っていたしおりですが、子供が生まれても日陰者としてコウスケの会社の人の目を盗んで暮らす生活に徐々にイライラを募らせ始めます。

なつきはゆいと一緒にいるときに、コウスケとしおりと子供が歩く姿を見て不快には思いますが、前ほど気に留めていない自分に気づきます。

ゆいの中学の入学式で久しぶりに会ったなつきはコウスケに「すごく幸せそう。もう別れてあげてもいいかなと思った」と笑います。嬉しさを隠せないコウスケでしたがなつきは「って思ってるだけー」と、とびきりの笑顔で続けます。

石川オレオさんって、こういう日常愛憎ものも描くんだー、と意外な気持ちで読み始めました。石川さんといえばサスペンスな印象だったので。でも、内容は「人怖」系、というか、十分サスペンスで怖かったです。

なつきのビジュアルが、小学校高学年の娘がいるとは思えない可愛さで、好みです。

上記はすごく端折って書いたあらすじです。最後のコウスケが一瞬「やっと離婚してくれる!」と希望を持ったのに打ち砕かれる様がリアルでゾッとしました。実際には数年たったところで離婚裁判をすれば別れられるのでしょうか?それとも、破綻の原因となったしおりと結婚したいから、という理由ではコウスケからは一生離婚できないものなのでしょうか?しおりと別れてしかるべき時間が経って次の恋人と出会ってその人と結婚したい、という理由だったら離婚できる、ということは知っているのですが、しおりといる限りはだめなのかも?でも、しおりもイライラしてきているし、「昔からなつきの持ってるものは何でも欲しがる」タイプのしおりがいつまでコウスケと一緒にいられるか、怪しい雰囲気もただよっています。

結婚したことのない私は、夫に浮気されるということが幸いにして(?)よくわかりません。なので、しおりが浮気して自分と娘を捨てようとしたコウスケにしがみつく感じはわからないといえばわかりません。でも、不倫相手がしおりだと知った瞬間に「コウスケはもう要らない。でもしおりにもあげない」という心理は、私にはすごくわかりやすかったです。いつ付き合い出したのかなんて、どう説明されても信じられないと思います。ゆいが生まれたときも、いや、結婚当初から、それどころか付き合い出した高校生の頃からコウスケとしおりは付き合ってたかもしれない、と妄想してしまいそうです。

実際には、しおりは高校時代から「私が好きだったコウスケくんと、好きでもないのに告白されたからって付き合うなんていうなつきのことが許せない!」などと言っているので、しおりは一途ながらも片想いだったみたいですが…そんなの、妻の立場にいたら信じらず、疑心暗鬼になってしまうと思います。

一方、夫が浮気していると知ったらすぐに離婚を決意するサヤカにも共感できます。でも妊娠してしまって「流れてくれたらいいのに」と、鬼畜なことを考えてしまったり、子供のことや周囲のあれこれで離婚できずにいる気持ちも、なんとなくわかります。

なつきとサヤカとしおりの友人で、しおりの不倫相手がコウスケだと知って、「なつきには知らせる必要がある」と、二人の関係をなつきに伝えてしまい、問題をさらにややこしくしてしまった美加の気持ちもわかります。友達の夫と不倫なんて許せない、と思ってしまうから。でも美加が、しおりのお腹の子の父親はコウスケだ、となつきにばらさなければ、離婚が成立して、少なくともコウスケとしおりだけは幸せになれたかもしれないですけどね。

共感が一番難しいのは、既婚者の恋人の奥さん以上に今カノが憎くなって、一度波攻撃しようとしたのに今カノを傷つけるために奥さんと共闘しようとする伊藤さんでした。そんな愚かなことを。自分を「お互いに割り切った関係」としか思ってくれない男のために、その男の新しいカノジョを憎むなんて。でも、恋愛感情のために愚かなことをしでかしてしまうのは、万人共通かもしれません。

コウスケとしおりはどっちにしても幸せにはなれない気がします。コウスケがしおりと寝たのは、しおりに好意を寄せていたからではなく、「妻ではなく母になってしまった」なつきに不満だっただけで、男扱いしてくれる女なら誰とでも寝てたはずだからです。しおりだって子供がいたら、どんなにコウスケを好きでも、妻ではなく母でいなくてはならないときはでてくるはずで、そうしたらまたコウスケは「なんとなく不満」な人生を送り始め、つまんないことでまた不倫に走ってしまうに違いない、と、私は思います。家族であることに満足できない人は必ず同じ過ちを繰り返すだろう、と思うからで、深刻そうな顔をして「妻以外の女を愛してしまった」と悩むコウスケは、実は「大切なのは妻だけ。身体の関係はそれとは別」と思っているトモキと、違いそうでいて本質的には違わない、というのが私の意見です。

なつきは、今後自分が恋することがあればコウスケを解放するでしょう。解放されたコウスケはしおりと幸せになろうとするけど、しおりは苦労して手に入れたコウスケが自分にとって素晴らしいものではないと薄々気づきはじめています。サヤカは浮気夫とはキッパリ手を切りたいのに、結婚は夫と妻だけのものではないが故に離婚に踏み切れず、子供の自我がでてきてパパを好きになったら、ますます苦しむことでしょう。

それでも結婚、続けますか、って重い言葉ですね。いろんな妄想をたくましくしてしまう作品でした。

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