学園伝説 ハサミ女

『学園伝説 ハサミ女』は梅野花さんの作品です。表題作を含め、4編が収録されています。すべて少女向けのホラーです。

私が一番好きなのは最初のお話、『隣のヨミさん』です。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

学園伝説 ハサミ女
学園伝説 ハサミ女

学園伝説 ハサミ女

[著]梅野花

Renta!

高校生のつかさは友達のこよいと噂話をしています。ヨミさんと呼ばれる少女の怪談です、自分の醜さを悲観して自殺した少女がいたのですが、彼女を溺愛する父親が彼女の遺体を剥製にした、その後父親は不審死し、少女の剥製も消えてしまいます。それからというもの、少女は美しい女生徒を襲って気に入った身体のパーツを奪うようになった、という話で、黄泉からきたからヨミさんと呼ばれているのです。

怖がるつかさにこよいは、きれいな子が襲われるならつかさは心配ないと言い放ちます。正直つかさはそんな扱いにも慣れっこです。

そんな時、クラスメイトの香里が夕方の校内で襲われます。下駄箱のなかに血のついた綿が入っているのを見つけた後、追いかけられて階段から落ちて骨折したのです。綿があったのは、剥製の中身が綿だから、と皆は噂しますが、こよいは明るく「いい気味」と嗤います。「ブスでデブのくせに調子にのってるから」と。

しかし登校した香里は「私を襲ったのはこよいだった」と糾弾します。つかさはかばいますが、こよいは走って逃げます。つかさは追いかけて「私はこよいを信じてる」となぐさめすが、こよいは私がやったに決まってるじゃない、私より目立つ奴なんて許さない、悪いけど私は私しか信じていない、あんたは引き立て役だよ、このブス、と嗤います。

すると、つかさは、そのことも、こよいが外見以外何の魅力もないこともわかっていたと微笑みます。それでも私があなたのそばにいたのはあなたが美人だから、そのキレイな髪をそばで見ていたかったから、とこよいに近寄るつかさの顔からは綿がこぼれでているのでした、

…という怪談を友人にしたこよいと同じ綺麗な髪の少女は友人に「爪のかたちキレイだね」とはなしかけます。

この作品も、先日感想を書いた『死神ドール』(たちばな梓さん)と同じく、少女向けホラーアンソロジーのなかで出会いました。お話もしっかりしていたし、美人のこよいが気に入らない同級生をおそっていたのも、主人公がヨミさんたったのも、こよい以外はつかさの存在を知らなかったのも、おもしろくて好きでした。が、何よりも好きだったのは、香里が襲われたことをいい気味、と喜ぶときのこよいの顔でした!リップを手に、上気した顔が、その性格や言っている内容に反してとってもかわいいです。やっぱり少女漫画にでてくるかわいい女の子はこうでなきゃ、と読んでいて盛り上がってしまいました。

他の作品も少女向けホラーとしてしっかり丁寧に描かれていると思います。こよいは顔や見栄にこだわり、常に誰にとっても一番でなければ気がすみません。香里を襲ったのも、以前自分に告白してきた男子が香里にターゲットを変えて告白したのが気に喰わなかったからです。

ハサミ女のなかでも、美少女に対して「唯一のとりえの顔」という言葉が別の少女の口から醒めた言葉としてでてくるので、梅野さんは美少女であること、それが人格と結びつかないことに対する幻滅に、敏感なのかもしれません。その点には好感をもちます。それとともに、ハサミ女では主人公もちょっとよこしまな気持ちを持っているし、つかさにいたっては悪霊だし、単純なアンチ美少女でもないし、美少女礼賛でもないし、でも美少女であることは登場人物たちも意識してるし、なんかおもしろいです。

少女向け恋愛アンソロジーでも梅野さんの作品を読みましたが、わたしにはホラーの登場人物たちのほうが魅力的に思えました。どういう活動をなさっていてどこを目指していらっしゃる作家さんなのかは知らないのですが、梅野さんが描く大人の女性向けのホラー読んでみたいと思いました。

にほんブログ村 漫画ブログ 漫画感想へ
にほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村


漫画・コミックランキング


レビューランキング

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です