お江戸ふしぎ噺 あやし

『お江戸ふしぎ噺 あやし』は原作 宮部みゆきさん、作画 皇なつきさんの作品です。宮部さんの江戸ものは不思議に彩られていますが、その世界を皇さんが艶っぽく表現してくれます。

『あやし』には5つのお話が収録されています。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

お江戸ふしぎ噺 あやし
お江戸ふしぎ噺 あやし

お江戸ふしぎ噺 あやし

[原作]宮部みゆき [作画]皇なつき

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最初の話は美女ではないおえんが、容貌を理由に奉公の話を断られたことに始まります。気の強いおえんもさすがに落ち込んだものの気を取り直して縁日に行きます。しかしひいたおみくじは大凶。大凶のおみくじは梅の木に結んで神様にお返しするのがよいと言われ、おえんは梅の木におみくじをくくりつけます。弟の箕吉はそのときおえんがなにやらつぶやいているのをみます。

おえんのかわりに奉公した娘は痘瘡にかかりあばたヅラになって親元に帰されました。そのことを聞いてからおえんの様子がおかしくなります。その娘が亡くなったと聞くと、病の床についていたおえんはてぬぐいを被り、その後一切それをはずさなくなります。おえんは箕吉にだけ理由を話します。大凶のおみくじをひいたとき、梅の木におみくじを結びつけながら自分の身代わりの名前を声に出すと、神様が大凶をその身代わりに渡してくれえうという話を聞いていたおえんは、自分の代わりに奉公にいった娘、お千代の名を呟いていたのでした。信じていなかったからこそやった行為でしたが、お千代が痘瘡で醜くなって死んだことでおえんは自責の念にかられたのでした。そう言って箕吉に見せたてぬぐいの下の顔は醜く腫れ上がり、二目と見られないものでした。

話し終えるとおえんは正気を失い、二度と元には戻りませんでした。成長して所帯を持った箕吉に、おえんが亡くなったとの知らせが入ります。姉の死を悲しむ箕吉が見たのは、あの無惨な顔ではなく、安らかに眠ったような顔でした。

宮部さんの江戸の不思議な物語は大好きです。しかもそれを皇さんの絵で楽しめるということで、読む前から期待が高まって仕方なかったのですが、その期待に見事に応えてくれる素晴らしい作品でした。

宮部さんのお話の特徴は、善い行いをしたからといって必ずしも幸せになったりいいことがあったりするわけではない、というところにあると思います。それでいながら人情が感じられ、人間の綺麗事ではない感情が、すっきりと解決されるわけではなく描かれています。

2つ目のお話では、家主が留守のところにいるあだっぽい女性が、好きな男に料理茶屋への口利きをされようとしている娘に、そんな男の口車にのせられていいのかい、とからかわれます。そしてそのおんなは、鬼は人の皮をかぶってるんだよ、と自分の体験談をしてくれます。娘は女が家主の内妻だと信じて話を聞き、反発を覚えますが、後日その女は家主を殺した一味だったらしきことがわかります。娘のところには色男が来てきれいなかんざしをプレゼントしてくれますが、娘の心は千地に乱れます。…でも、この話に結末はつかないのです。娘は、女の話を思い出し、色男と自分の顔を水溜りに映したら鬼がみえるのではないかと思い悩むのです。

そんなところが、たまらなく余韻があってすてきな物語です。かぼちゃの話はめでたしめでたしなお話。最後のお話は江戸から東京の時代にまで続く不思議の話。お話の内容はもちろん、方向性や読後感もまるで違う5つの作品は、皇さんの画力が高いことも相まって、まるで宝玉を5つ手のひらに置いたような気持ちになりました。

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