転校生のサチコさん

『転校生のサチコさん』は坂元勲さんの短編作品で、『あけまして、御愁傷様です』に収録されています。リオのクラスにサチコが転校生として編入してきました。リオはサチコがすごく怖いと感じるのですが、皆はなんともないみたいです。

クラスの自称霊感少女のチヅルはサチコに対抗意識を燃やします。

ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

サチコに挑発されたチヅルは、サチコが「本当にヤバいところ」と言ってみんなを連れて行った古いアパートの2階の部屋にみんなを連れて入ります。するとそこは異空間になり、逃げようとして窓から飛び降りた級友二人の姿は見えなくなります。「あなたのせいだよ、チヅルちゃん」と笑いながら言うサチコをチヅルは窓から突き落とします。ほうほうの体で外に出たリオとチヅルでしたが、チヅルは興奮して普通の状態ではありません。リオは警察に行きましたが、飛び降りた級友たちもサチコも見つかりません。

翌朝サチコがリオの家に来ます。昨日2階から落ちてクビが折れたと笑って見せるサチコにリオは戦慄して家に逃げ込みます。祖母と母が不思議に思って玄関を開けますが、サチコの姿を見て二人とも凍りつきます。

サチコは祖母の中学の同級生。当時ヤバいと噂の祠に遊びに行く計画だったところ、祖母だけが怖くて行かずに逃げたのでした。調子に乗って祠を壊したサチコに呪いがかかったとき、サチコは「死にたくない」と強く願います。その結果、サチコは成長もせず、クビが折れても死なない異形のものになってしまったのでした。

サチコは祖母と母とリオを異界に引きずり込み、三人を殺そうとし、祖母がサチコを刺して反撃します。気づくとサチコの姿は消え、祖母が心臓発作で命を落としていました。

その後サチコが現れることはありませんでしたが、リオの娘が中学生になったとき、娘がクラスメイトや転校生と一緒に遊びに行くと言って家を出ていきます。気になって子どもたちの様子を伺うリオの前にいたのは、変わらぬ姿のサチコでした。「すっかりおばさんだね、リオちゃん」と、サチコは冷笑します。

坂元勲さんは、『ぞくっとする本』を読んだのが初めてだったと思います。端正な絵に少女漫画らしいホラーで、とても気に入りました。その後も少女向けホラーのアンソロジーで読むことが多く、気になる作家さんの一人です。

『あけまして、御愁傷様です』は、お話としては表題作が一番好きなのですが、『転校生のサチコさん』は、サチコの顔がすごく好きで、特にクビが折れた状態で祖母、母、リオに迫ってくるサチコの絵をどうしてもブログに載せたくて、感想を書く作品としてこれを選びました。クビはあらぬ方向に曲がってはいるのですが、サチコの顔、特に目から、目を離すことができなくて、いろんな角度からこの絵を眺めてしまいます。スマホをくるくる回して見ているので、他の人から見ると「何してるんだろう?」状態ですね。

ストーリーは、美しい転校生、霊感少女の立場を奪われちゃってイライラする気の強い同級生、何故か最初から恐怖を感じていて、実際呪いのターゲットである主人公、気の強い子や主人公といつもつるんでる級友たち、という少女ホラーの王道のように思います。

さちこはヤバい場所にみんなをつれていくのではなく、ヤバい場所を作ってしまいます。そうやってまずは本命ではない少女たちをいせかいに送り、そして本命であるおばあちゃん、その娘と孫であるリオを狙います。おばあちゃんは、サチコが呪われるきっかけになった祠には行かずに逃げ帰っているので、とっても理不尽だと思うのですが、悪霊になってしまったサチコにはそんな道理は通じません。

リオの娘の前に現れたサチコ。リオのママやリオの命も狙うのでしょうか。リオの娘を狙ってリオの絶望を深めるのでしょうか。いや、やっぱり、リオの娘の友人たちを巻き込んだうえで、リオのママの命を奪い、次はリオを狙いそうです。

いつか小林薫さんの『斎さんシリーズ』の斎さんみたいな霊能者さんに調伏されるまで、サチコの呪いは続きそうです。

ともかく坂元さんの絵を見ていたい!というパッションで、何度も何度も読み返してしまうのでした。


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