『ホラー シルキー マジメに占ってもらいました4 Over60の未来予想図』は、オカルト・ホラー漫画家の永久保貴一さんが、仲村健史さんに占ってもらった様子を描いた18ページの短い作品です。
シリーズで、他にも亜月亮さん、楠木圭さん、大橋薫さんを、同じ仲村さんが占ったものがでています。
ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。
永久保さんは過去に占ってもらった後、そのときに占われた年齢で占われたプロフィールの奥様と結婚されたそうです。そんなわけで、占いに否定的なわけではなく、不思議なものを感じていらっしゃるようです。
今回は60を過ぎての今後の漫画活動についてを占ってもらいます。占い師ってどんなものかを仲村さんは分かりやすく説明します。占い師Aが「盗難に合うから気をつけて」と言い、占い師Bが「盗難にあいそうだから警備をちゃんとして」と言った場合、実際盗難がおこると仮定すると、あいまいなことを言ったAの顧客は占いは当たった!と感じ、万全の警備を導入したおかげで盗難にあわなかったBの顧客は、占いは当たらなかった、と思うかもしれない。その場合有名になるのは占い師Aだけど、顧客にとっていい占い師はどちらでしょう?という説明です。なるほど。
そして、仲村さんは、永久保さんの将来は、このまま続けていけば先細り、仕事はなくなり食うに困るようになる、といいます。永久保さんに限らず出版界が先細りだということなのです。そこでうろたえる永久保さんに、仲村さんは仕事のスタイルを変えてみることを進言します。永久保さんご自身がメディアに出るなどもひとつの策だと示唆します。
「この先10年は安泰、とか言って欲しかった」という永久保さん。仲村さんによると、占い師の出番はここからだそうで、新しいビジネスで手を組む会社はどこにするとか、原稿を持ち込む日はいつがいいとか、細かいアドバイスはいくらでもある、とのことでした。
占いって興味あります!30代前半、占いってどういうことをしてくれるのか興味津々で、デパートの占いコーナーに行ったことがあります。15分か30分で3000円だったかな?言われたのは「あなたは何かあったら人に助けてもらえる運命の下にいる」で、5分もたたないうちに聞くことがなくなってしまいました。そんな私だったので、このシリーズは、占い師さんが何を言うのだろう、と楽しみに読みました。
ビックリしたのはzoomでのリモート面接での占いだったということ。占いとは統計だと聞いたことがあります。そう考えると、確かに事前に誕生日とか生まれた場所、今までの仕事ぶりなど、情報があれば成立するのかもしれません。でも、結局は本人の雰囲気をみたり、体の動作の細かい動きなどから心情を察することも、占い師の仕事のうちのひとつだと思っていたので、zoomでできるというのは驚きでした。
そして占いの内容も、ビジネス指南を受けているようですビックリしました。印刷業界が斜陽で、電子図書がその代わりとなるビジネスになるのかどうか、とかいろいろ考えられることは多いと思いますが、占い師さんも幅広くビジネスの勉強をしないといけないですね。そして、永久保さんに、ビジネスの切り口を変えて新しいことに挑戦しないといけない、というのも新鮮でした。私は永久保さんの作品は『極めて怖い話』を読んでいて、『カルラ舞う』のシリーズが有名なのではないかと思っていますが、そんな永久保さんのお仕事が先細りになるとはちょっと想像できません。でも例えば、メディアに永久保さんが出る、というアイデアは面白いと思いました。
正直にいうと怖かったのは、今後ビジネスを展開するのに「組む会社を選ぶとき」「原稿を持ち込む日」とか、細かいことで、先が見通せない限り決め手がないことって、仕事をするにおいても、普通に生活するにおいても、数え切れないほど沢山ある中で、それらをいちいち占い師に仰ぐことです。そうしていると、占うことは雪だるま式に増えます。たとえ占い師さんが最初は誠実な人であったとしても、信者ができちゃうと、濡れ手に粟の商売になっちゃって、自分が占えなかったり、占えてもお金がとれる言葉にならないことっていうのは握りつぶして、お金の亡者になっていってしまうのではないでしょうか。人に影響を与えるお仕事ってこわいですね。
占いが悪いなんて言うつもりはさらさらないし、私自身占いは好きではありますが、なんだか怖くなってしまう作品でした。