民間科学捜査員・桐野真衣 殺人初心者

『民間科学捜査員・桐野真衣 殺人初心者』は、原作 秦建日子さん、漫画 瓦屋根さんの作品です。ダニ向け殺虫剤の研究をしていた真衣は婚約を破棄され、会社もリストラされます。

元婚約者の妹である有能な科捜研のスタッフゆかりに紹介された民間科学捜査研究所に、真衣はからくも採用されます。

ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

職場に、新商品であるオーガニック・ピュアクールという記事素材の見本についた指紋を調べて欲しいという飯塚社長が訪れ、真衣の先輩である緋村はそれを引き受けます。真衣は、社員は家族だという飯塚の笑顔を快く思い、仕事に力を注ぎます。

そんななか、遺体が発見されます。そばに真衣の署名の入ったオーガニック・ピュアクールの鑑定書が落ちていたことから情報を得た真衣は緋村に導かれて殺人現場に侵入して遺体を確認します。警察は、最近話題の連続殺人(被害者はいずれも女性で、顔に格子状の傷が刻まれている)事件かと意気込んで捜査に訪れ、入り込んでいた真衣を怒鳴って追い払います。警察は飯塚社長によるリストラを苦にした営業部長狭山の自殺だと断定します。

真衣は直感的に、見た遺体の首の索条痕がおかしいと感じ、記憶を頼りに実験を繰り返して索条痕が普通より浅いこと、つまり、自殺に見せかけた殺人ではないかと警察に駆け込みますが、相手にされません。

緋村から、依頼人がなければ仕事はできないと伝えられた真衣は、亡くなった狭山の妻にかけあいますが、夫が死んだばかりの人間に金をせびるあなたは非常識、何をしても夫は帰ってこない、と断られます。そんな狭山の妻の左手は義手です。

ふとした偶然で、真衣はオーガニック・ピュアクールがオーガニックではなく化学繊維であることを突き止めます。飯塚が社運をかけて臨んだ新製品は実はまがい物。会社の経営はそこまで追い詰められていたのです。

そんな中で、飯塚が遺体であがります。顔を格子状に切られた遺体を見て、警察は連続殺人のひとつだと決めつけますが、緋村と真衣は綿密に調査し、飯塚は近所の駐車場から落とされて死んだことをつきとめます。

一方、警察は科捜研のゆかりが検出した情報を頼りに格子痕をつけた連続殺人犯を割り出し、逮捕します。一息つこうとするゆかりを真衣は呼び出します。真衣は狭山の妻を調べ、彼女の左手が義手になった原因は高校時代の実験の失敗にあり、その原因はゆかりがつくっていたことをつきとめます。ゆかりは、飯塚が狭山の妻に、狭山がオーガニック・ピュアクールがオーガニックでないことの証拠を持っていたはずだと詰めよっているところに出くわし、飯塚を殺し、捜査を撹乱するために、格子状の傷をつけていたのでした。

一緒にお茶を飲みながら真実を突きつける真衣に、ゆかりは証拠がない、と突っぱねます。真衣はゆかりの髪を切った美容院から回収してきたゆかりの髪をゆかりに渡し、後はゆかりに任せるといいます。ゆかりが髪を切ったのは、飯塚の血が髪に付着していたから。「私はもうゆかりちゃんと友達でいられないかも」「すごく寂しいよ」と言い残した真衣の言葉に、ゆかりは涙します。

カフェの外で真衣を待っていた緋山はお前がきてもう「3週間」だといいます。たった3週間でいろんなことがあった、と真衣は思います。

民間の科捜研というものがあることを初めて知りました。あ、いえ、この漫画を読むまで、民間の科捜研という発想がなかったです。そして本当にあるのかどうかはチェックしていません。

面接で初めて人のひどい状態の遺体の写真をみせられてこんなの無理だろうと挑発されて、じっと見つめて「慣れました!」と宣言する真衣の、何が何でもここで就職してやっていかなければ、という覚悟に共感して、スムーズにお話に入ることができました。

焼死体の遺体をいくつも見せられて頑張って仕事をこなす姿もグッドでしたし、とり方すらわからなかった指紋の採取と照会に、どんどん集中してのめり込み、終電が過ぎてもほとんど気にせず、見ようによっては不気味な等身大人形と一緒に研究所で寝付く真衣の姿は面白かったです。残業代はあるのかないのか、納得いく収入があるのかどうか、ちょっと気にはなりますが、体力的に十分であるなら、納得いくまで好きに仕事できる環境があるのはいいことだと感じました。

私は理系は苦手な方なのですが、それ以上に単純作業の繰り返しは苦手なです。なので、遺体の写真の分類や指紋採取の繰り返しなどの地道な作業も厭わず、さらに、作業だけにならずにその内容を頭に入れて知識を積み重ねていく真衣はすごい!と思ってしまいました。沢口靖子さんに代表されるのではないかと思われる科捜研のイメージとはまた違って、地道な作業の積み重ねを、納得できるまで続け、楽しそうな真衣を見ているとこちらも楽しくなります。

索条痕を一目見ただけで違和感を覚え、記憶に刻み、納得できるまでダミー人形で実験を繰り返すシーンには感動しました。最終的にはPC上でシュミレーションして自分の記憶にピッタリの索条痕を再現するのですが、この観察力と記憶力は、まさに科捜研にふさわしい能力だと思います。

切なかったのは、捜査するために遺族に依頼してもらいにいって断られるところです。ストーリー上、亡くなった人の奥さんに何か怪しいところがあるかも、と思わせるような含みはあったのですが、読み終わって読み返すと、奥さんが淡々と語るところがすごく辛いです。自分は突然警察に呼び出されて夫が自殺したといわれる。会社とはリストラを巡って対立していて、夫はリストラのトップに名前があがっているような立場だったと知っている。辛いけれど責任のある仕事をしていて気分で休んだりはできない。幼い子供の毎日の食事も心配しなければならない。亡くなった夫には大きい額の保険金がかかっていたので恐らく払われる。その状況で民間の科捜研が来て、個人的に気がすまないから調査と捜査をしたい、だからお金を払って依頼して欲しいと言われる。

そんな状況でも感情的に怒鳴り散らしたりしないのは、そんなことをしても亡くなった夫が帰って来ないと知っているから。後には食い下がる真衣に「二度と来ないで下さい」と言い切る妻でしたが、気丈な振る舞いに、悲しくなりました。そして、民間の科捜研ならではの限界も感じました。どこまでも真実を追求したい真衣は、いつかまた同じジレンマに出会いそうです。そして、だんだん先輩の緋村のように、自分なりの達観を持っていきていくようになるのだと思います。

前職のダニの研究が、捜査に最高の形で生かされていたのもよかったです。細かい違いをしっかり観察してのめりこんでいく真衣の性格を表すエピソードだと思っていたダニの研究が、ストーリーに無理なく素晴らしく生かされていました。理系女子のエピソードも、真衣のアレルギー体質も重要なファクターで、ストーリーに生かされていました。

交換日記の記述がでてくるのは、普段の私だったら正直読み飛ばしてしまいそうですが、今回は他の読者さんの感想を先に読んで、日記部分も大切だと知っていたので、しっかり読みました。なるほどそういうことだったのか、と、面白かったです!小説だったらよくある手法だと思うのですが、漫画だと新鮮です。

最後に真衣は、まだ3週間しか経ってないのだと感じますが、それは読者も感じます。たくさんのことがぎゅっとつまっている2冊でした。

にほんブログ村 漫画ブログ 漫画感想へ
にほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です