秘密のサイコさん

『秘密のサイコさん』は橘裕さんの作品です。主人公の高校1年生、近藤一巳はコワモテ。しょっちゅう何かにつまづくのと家事が得意なこと以外は普通の子なのに、外見で誤解されます。そんな一巳が唯一親しくしているのは、学校一のモテ女、樫倉早絵子。

早絵子のぬいぐるみ、チャッキーを一巳が繕ってあげたことから二人の友情は始まりました。早絵子はほんのりと一巳に恋心を抱いているようにも見えます。

ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

実は、一巳がよくつまづくのは、霊に足を取られているから。霊から見ると一巳の身体はほんのり光って見えるので、助けを求めて寄ってきているのです。それを知っているのは早絵子の中にいる別人格のサイコと、チャッキー。最近階段から落ちて死んだモテモテ男の金田くんが亡くなった場所で、一巳が初めて霊をみてしまったことがきっかけで、一巳とサイコ、チャッキーと、霊となった金田の4人での浄霊活動が始ります。

浄霊しよう、と決めたわけではないのですが、霊が一巳によってきてしまうのです。サイコには、霊を物理的に攻撃する力があり、チャッキーにはそれを「あっちの世界」に送る力があります。金田は生前早絵子が好きだったのに、モテ男過ぎて自分から気持ちを伝えることができなかったという未練もあって、一緒に行動しています。

たとえば…一巳はマミという子供の幽霊になつかれます。マミの両親は子供が嫌いで、娘に邪険にしていました。母は妊娠して機嫌が悪く、父は犬のほうがかわいいと言い放ちます。マミが海に入りたいというのでしぶしぶ犬と一緒に海岸に来て、目を離したすきに娘が波にさらわれたのが真実でした。そのシーンが父親の目の前で再現され、サイコは彼を殴り、チャッキーが地獄巡りをさせます。一巳はマミを波からすくい上げて愛を持ってマミに語りかけ、マミは笑って自分から成仏します。

そんな日々を送っていた中、早絵子の母が現れて早絵子を監禁します。自身も霊感者だった彼女は、人助けで浄霊をしていましたが、とても負荷がかかることもあり、双子の子どもたちのことも考えてある浄霊をことわりました。すると依頼者は霊に取り込まれ、自分も悪霊になり、早絵子の双子のかたわれである尊を殺してしまったのでした。からくも早絵子を助けた母は精神のバランスを崩し、早絵子を監禁するようになったのでした。その中でサイコという別人格が生まれ、尊はチャッキーとして監禁から脱出して叔母のところに逃げ出していたのでした。

監禁された早絵子を、尊の姿に戻ったチャッキーと一巳とサイコが救います。母の歪んだ愛から、尊とサイコはしっかりと決別するのです。

母との戦いの中で悪霊にされかけた金田は、霊としてのパワーを使い果たし、早絵子にきちんと告白して成仏します。初めての親友を失って傷心の一巳ですが、自分の別人格サイコを受け入れてうまく役割分担している早絵子と、バージョンアップしたチャッキーと前を向いていきます。

1話の表紙のサイコがかっこよくて、次のページに出てくる一巳のコワモテ顔も気に入って、さらにチャッキーのデザインがかわいくて、最初から夢中になってしまいました。

コワモテで上級生からも一目おかれているけれど、実は全然地味で普通の性格の一巳が、裁縫男子で料理も上手、というギャップは、新鮮というよりは王道の少女漫画設定だと思うのですが、王道だけにキュンとしちゃういい設定だと思います。クラスの男子が拾ったボロボロのぬいぐるみの持ち主を探し出してやろうぜ、とはしゃいでいるところで、すっとぬいぐるみを取り上げて「捨てておくから」と言って、さりげなく破れや壊れたところを直して、誰もいないときにそっと返してくれるところは、早絵子でなくても一発でやられちゃって恋慕を抱いて当然だと思います。

そしてチャッキーのデザインと性格が最高です。チャッキーは本当は早絵子の双子、尊なのですが、負けん気が強くて賢い少年であると思うより、チャッキーという特殊能力を備えたクマだと考えたほうがしっくりきます。尊だと思っちゃうと、成仏しなくていいのか、早絵子に恋人ができちゃったらどうするのか、とか、ちょっと考えちゃいます。

それは早絵子とサイコも一緒で、人格が統合されなくていいのか、というのは気になっちゃいます。いままでは、霊が現れると早絵子が意識を失って自動的にサイコが現れていたので、早絵子が尊が亡くなった後に母に監禁されたときに極限まで追い詰められたときに出てきたサイコを、早絵子は知らなかったのですが、これからはお互いに意識して入れ代わり、役割分担していくようです。

「恋人ができたらどうするんだろう」というのは、一巳がこのまま早絵子の恋人になれば問題ないのかな。サイコは早絵子ではないので、チャッキーとサイコと一巳のトリオでの活動はこれからもうまく続きそうです。

でもやっぱり、早絵子とサイコ、そして一巳にも、それぞれ友達はもうちょっと欲しいかも。一巳は友達がいないことが言及されていますが、早絵子も、モテ女として女の子から遠巻きにされているような感じがあります。サイコやチャッキーのこともふくめて理解してくれる女友達が、一巳にも、幽霊じゃない親友ができて欲しいものです。

金田はストーリー上はそれほど重要でない気もしますが、キャラとしては不可欠な明るい雰囲気を出してくれていて、いい役割でした。

少女漫画らしいかわいい絵柄と魅力的なキャラクターたち。後味の悪くないストーリー。安心してとっても楽しく読みました。

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