ゴミ屋敷とトイプードルと私 港区会デビュー

 『ゴミ屋敷とトイプードルと私 港区会デビュー』は池田ユキオさんの作品です。前作は、ゴミ屋敷に住みSNS映えのためにトイプードルを飼ってキラキラ女子を装っていた34歳の女性が没落するお話でした。『港区デビュー』はその後輩24歳のサヤのお話です。

サヤは恋人の徳井にプロポーズされ、さっそくエンゲージリングをはめて彼と繋いだ手の写真を、自分のSNS(フォトスタ)に載せます。

ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

徳井は広告代理店電報堂のクリエイティブのトップアートディレクターでイケメン。サヤは同僚女子たちにうらやましがられ得意満面ですが、エンゲージリングがハイブランドないことを揶揄され、一気に気分が冷めます。

そんなサヤが憧れるのはフォトスタグラマーのMisaki。顔出しはしてませんが、きらびやかな毎日を送るホンモノの港区女子です。

サヤは個人的なフォトスタの実績なども評価され、事務から営業に抜擢されます。同日に派遣社員の中山が配属されますが、サヤは派遣社員などとは付き合いません。付き合うのはトップ営業のひとり、詩織。

詩織に誘われたサヤは港区会に参加します。大企業、有名新興企業のパパたちが全部お金を払ってくれて、サヤたちは一銭も使わずに遊び放題です。サヤは詩織に勧められ、パパたちと寝て広告の仕事を約束してもらうようになります。華やかな生活が楽しくなったサヤはフィアンセの徳井をないがしろにするようになり、結局はふられます。

しかし、サヤが複数のパパたちと不適切な関係を持っていることがSNSで告発され、社長たちは手のひらを返して広告の仕事をなかったことにします。サヤは、残業中にフォトスタにクライアントの機密情報が映り込んだ写真を載せてしまったこともあり、謹慎となります。

謹慎中に港区会の女子会に乗り込んだサヤに、詩織は言い放ちます。港区会はゴージャスな日々を愉しむ場所。参加する女性はミスコン優勝者クラスの美女ばかり。でもパパたちも男なので見返りを求めてくる。サヤは、生贄としてパパたちに捧げた性欲処理女。生贄にサヤを選んだ理由は、徳井と婚約したのが目障りだったから。

怒って暴れてパーティ会場から放り出されたサヤの目の前に現れたのは憧れのMisaki。その正体は派遣社員という名目で結婚前の社会勉強をしていた中山でした。すがるサヤをあっさり振り払った中山は「徳井さん、素敵な人だったのに」と言い残します。

サヤは徳井の家に入ってよりを戻そうとしますが、通報されます。

職も失い、行き場を無くしたサヤは、没落した港区会員の元社長のツテで六本木のボロアパートに住んで、スーパーのパートをしています。六本木のキャバクラは容姿で落とされました。でも港区以外で働く気はありません。毎日、何が悪かったのか考えながら、フォトスタにたまにつくコメントを喜んだりして過ごしています。

港区女子、という言葉、実はこの漫画で初めて知りました!つまり私は全然縁がないということです。調べたところ、港区女子は25歳を過ぎると港区おばさんになっちゃうらしいです…港区と言っても、新橋とか大門、芝、芝浦のような大衆的なエリアは彼らの眼中にはないそうです。お金を出してくれるのは港区おじさんと言われるパパたちですが、インスタでキラキラした自分を発信するときには男の影はみせないそうで(実際、高収入の女子も多いそうで)、サヤちゃんもフォトスタに写真を載せるときにはおじさんが映り込まないようにトリミングしています。

正しい港区女子がどんな子なのかは、サヤの憧れ、Misakiが見せてくれます。高級な場所で高級なものを食す女子会、週末や有給をとってシンガポールでハイブランド品爆買。サヤとMisakiが出会ったときには、Misakiはリムジンから降りてきて、リムジン移動でもなければ着れない豪華なパーティドレスを纏っていました。

中山は、派遣社員とはいえ営業としてのセンスがあり、茶色グラデーション弁当を持ってくる女なのですが、どこか醒めたところがあって、サヤや詩織に無視されても気にしないし、仕事できる設定の徳井にあっという間に気に入られているし、多分Misakiの正体は中山なんだろうなーという予想はついていましたが、主人公であるサヤの好感度が低いこの作品では、見えてるとおりの展開になるところもおもしろいです。

妙にサヤに優しく、パパ活を勧めてくる詩織のことは謎でした。これも、港区女子をわかっている人がみればすぐわかるのかもしれませんが、自分たちがパパたちに身を捧げたくないから、サヤのような、本来港区女子に入ってくるタイプではない女を、パパたちに差し出すというのは意外だったし怖かったです。実際の港区女子にそんな制度があるとは限りませんが、お話としては、「港区女子会は伏魔殿」みたいな感じで、おもしろかったです。

仕事は、寝たパパに「よろしくね」というだけで社内で褒められたりしていたので、この会社(多分、日本最大手の広告代理店)の営業部の仕組みが不安になっちゃいます。

詩織たちは実際、高級ブランドのヒールで闊歩して仕事をとってたみたいですが、営業の新人、サヤにも中山にも何にも教えずに電話番をさせて、かたや男と寝まくって仕事を(自称)とり、かたや、A社とB社が合併するというインサイダー情報みたいのをベースに新企画を顧客に持ち込もうって…この会社の指揮系統いったいどうなってるんだ…それも含めておもしろかったです。

サヤちゃんはストーカーにもあっていて、そのことを喜々としてフォトスタに載せます。これは、前作でキラキラ女子でいることに失敗した主人公が、他人の写真を使ってでもキラキラ女子でいつづけようとしたのと似通ったところがあって、すごく切なかったです。

徳井との関係の中では、買ってきた高級惣菜を手作りとして彼氏に出しているのはばれていて、それも彼氏の立場から見るとかわいいウソだと思っていた、でも今は自分にアピールすることではなく、フォトスタで自慢することが目的になっている、いったい何のためにそんなことを?と、徳井がキレます。その徳井の気持ちはよくわかります。ウソをついても「かわいいウソ」、料理ができなくても構わない、と思って、一点物のエンゲージリングをプレゼントしてくれる彼氏だったのに。ああ、もったいない。でも、徳井はサヤの何が良くてプロポーズしたんだろ。

傍から見れば、港区会なんかにはまらず、営業部でも地道に電話番をして、中山みたいに情報をキャッチしてせんぱいに上奏する、というキャリアパスを伸ばす道もあったのに、と、とても残念です。

池田さんの作品は、軽いノリで描きながらも、最近の社相が扱われていたりもするのと、主人公がどこか歪んでいるところに惹きつけられて、ついつい何度も読んじゃいます。このシリーズも最新は、爆食ぶっちゃけ系配信者だったまみりこが、億女を目指していろいろ画策するお話です。この先も楽しみです。

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