SNS狂の女 (1)〜(12)

『SNS狂の女』は漫画 もうりみつこさん、原作 乙葉一華さんの作品です。自己顕示欲の強い若い女のコがSNSを使って承認欲求を満たそうとするお話です。まだ続いていますが、一連のストーリーがまとまっているところで感想を書かせていただきます。

ユキは大学の準ミスに選ばれました。その場ではにっこりしますが、本当は何故自分が優勝じゃないの!?と穏やかではありません。

ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

ユキは優勝した子のイースタに、裏アカを使って悪口を書き込んで溜飲を下げ、自分を擁護しますが、それだけでは気がすみません。ついにはフォロワーを24万円で買います。インフルエンサーとして名を上げ、事務所にも所属して読者モデルとして頑張るユキですが、プロのモデルのスタッフには「素人モデル」と蔑まれます。

それでも、同級生の奈々から「友達になってください」と手づくりクッキーを差し出されれば「あんたみたいなブスが私と友達になれると思ったの?」と侮辱したり、映画監督を見かければ体を差し出して役をとろうとするなど、見境なく行動します。結局端役しかもらえなかったユキは、台本のクライマックスシーンを裏アカでアップして復讐します。

見境ない行動のツケは大きく、監督の奥さんから訴えるとおどされて示談金を要求され、事務所は解雇され、モデルもクビになります。SNSでフォロワーを買ったことや裏アカも何故かばれ、自作自演はもちろん裏アカでの台本晒しの損害賠償も請求され、ユキは絶体絶命のピンチに陥ります。

SNSでの悪事をあばいたのは奈々でした。ユキのひどい態度に傷つき、SNSのユキのアカウントをみていたときに、ユキの悪事に気づいたのでした。奈々はネット上で「正義のバナナ」を名乗り、ユキ以外の有名人の不正アカウントも裁きます。するとイケメン男子のファンと親しくやり取りできるようになり、奈々は恋心を抱きます。

イケメンに「加工画像も罪だから暴いて」と言わた奈々はSNS警察行為を続けます。他人から非難されても頑張る奈々でしたが、憧れのイケメンに誘われて会ってみると、彼の正体はユキでした。ユキは、性別転換アプリで男子になった写真をプロフに使って奈々をたきつけ、恋させ、事実を知らせることで、復讐への復讐をしたのでした。

そんなユキは、SNS騒動のあと大学を辞め、またコツコツとフォロワーを増やしながらパパ活をして生活していたのですが、あるパパから「このスマホをつかえばなりすまし放題だよ」と支援をうけ、住居もあたえられます。隣の部屋に住むのは大手事務所シェリーズの人気俳優。ユキは自分を陥れた正義のバナナへの復讐を図りつつ、俳優の情報を得てイースタに匂わせ投稿を始めます。有料ブログも作ってイースタのフォロワーをブログに誘導して稼ぎます。

ユキの投稿に恐れをなした俳優は本物の彼女との交際を発表して人気を落とします。つぎにその部屋に住んだのは同じシェリーズのアイドルです。ユキはまんまとアイドルのセフレになり、また匂わせを始めます。すべてが順調にいっている中、アイドルは裏アカにユキの淫らな写真を「コレクションのひとつ」として投稿しようとして本アカに誤爆してしまいます。

アイドルは事務所をクビになって失墜しますが、ユキは「ますます有名になった」と大喜び。アンチがアイコラでユキのヌードを掲載しているのを見て「みんなこんなのすきなんだ」ときわどい写真をイースタやブログに貼り始めます。

そんなある日、買い物をしようとすると電子マネーの残高がなくなっています。あわててマンションに入ろうとカードキーを使っても入れません。ユキがパパに連絡すると、パパは実はシェリーズのライバル会社の社長だと告白します。ユキを使って俳優やアイドルをつぶした今、ユキは用済み、ユキが貯めた電子マネーは、前に情報流出されてユキを訴えていた映画監督への慰謝料と、タレント事務所への違約金に使った、と嗤います。

来月にはブログの収入が入るから大丈夫、と思ったユキでしたが、度重なるきわどい投稿のせいで、イースタもブログもアカウントがBANされてしまっていたのでした。

崩れおちるユキの様子を盗撮して投稿しているのは、もちろん正義のバナナこと奈々です。

かわいくてあざとくて、多数の裏アカを駆使して自分を褒め、人を貶すユキ。決して裕福すぎるとはいえない実家に24万もの出費を突然負担させてフォロワーを買って満足するウソつきです。一方、ユキへの制裁をきっかけに、ゆがんだ正義感でネットの虚偽投稿晒しを始めた奈々。

どちらも決して好感を持てないキャラなのですが、お話に勢いがあってついついどんどん読んでしまいます。

SNSでの承認欲求を拗らせて自滅していく女性の漫画は、正直掃いて捨てるほどあります。どれも主人公がはなもちならない承認欲求のカタマリか、あるいは常識を持った主人公が暴走する知人に振り回されるお話です。そしてその主人公や知人は肥大した承認欲求のせいで、最後にはとても惨めな状態に陥ってしまいます。

好感を持てない主人公や、パターン化した転落物語でも、つい読んでしまうのは何故なんでしょうか?これだけたくさん作品があるのだから、読んじゃう読者は私だけじゃなくて、一定数の需要がある物語なのだと思います。

この作品は、ユキや奈々が、大学のミスコンで2位と3位をとるようなカワイイ女のコであり、実際絵がカワイイことと、時折でてくる主人公の変顔が私にとって魅力です。それと、やっぱりジェットコースターのような勢いと、思わず「あり得ない!」と叫びたくなる、ユキのとっぴょうしもない行動もおもしろいです。24万もだして日本人フォロワーを買っちゃうとか、人気俳優との匂わせを撮るために、ポストの中から宅配便の不在通知票を取り出すとか、自分のエロい写真を公開されてもショックをうけるどころか「もっと注目されちゃう」と狂喜乱舞するとか、行動が完全にいっちゃってて、目が離せないのです。

フォロワーを買うということについては、以前記事で読んだことがあります。作ったけど放置されてるアカウントをのっとってフォロワーとして売る、ということもあるそうですが、何故売られたかわからない生きているアカウントも、売られるフォロワーの中には混じっているそうです。ある地方自治体のアカウントが、不適切な複数のサイトをフォローしていることを市民に指摘されて調査したところ、誰もそんなサイトをフォローした事実はなく、怪しいのでそのアカウントは削除して他のアカウントを作り直してセキュリティを強化した、などという例もあるそうです。

でも、いずれにしても買ったフォロワーはゴーストで、自分が投稿した記事を読んでくれるわけでもなく、褒めてくれるわけでもありません。そんなのって虚しいと思うんですが、目に見えるフォロワー数だけで承認欲求が満たされたり、あるいは「フォロワーがたくさんいるインフルエンサー」として他人から見られさえすれば、それで満足できる、という人がいるのでしょうね。読んでいて、そのことが面白かったし、日本人フォロワー1000人で3000円、という相場感を知れたのも面白かったです。ユキはフォロワー2万人に8万人足して10万になったので、80%がニセモノなんですが…やっぱり虚しいけどなあ。

このお話で一番納得いかないのは、いくら誰もみてないとはいえ、ユキが奈々にひどい態度をとるところです。誰からもよく思われたいインフルエンサーになりたいんだったら、自分に憧れてくる子にはとりあえずいい顔して、やんわりと遠ざけることもできたんじゃないかなあ?と思います。奈々はミスコンで3位になった実績があるので、それなりにファンがいたり注目されてたりしてもおかしくない気がするのです。奈々に悪口言われる前に、自作自演で奈々の悪口書いたような気もしますが、その場ではにこやかに当たり障りない受け答えをして、後でSNSに自作自演の悪口書いたほうが効果的だったんじゃないかなあ。実際、奈々が正義のバナナになって、ユキのアカウントを解析したことが没落のきっかけのひとつでもあったので、ちょっとだけ残念な気がしました。

復活したユキがパパにそそのかされて、シェリーズの俳優やアイドルの匂わせをやる展開は面白かったです。SNS中毒の主人公たちの中でそういうことをやる人は初めて読みました。現実世界では、無名なインスタグラマーではなく、ある程度の有名人がやっているのは聞いたことありますが、ユキの場合は実際に面識があろうとなかろうと、SNS知名度を上げるだけのために匂わせをしるという設定がおもしろくて、下世話ながらもワクワクしました。

そんなユキちゃんなら無一文になってもなんとかしそうですが、着替えも私物も一切家の中にあって取り出せない状況から這い上がるのはさすがにちょっと大変そう。電子マネーに頼ってて現金あんまり持ってなさそうだし、実家に帰れるのかな?それとも最低限の着替えだけ買ってなんとかするのかな?奈々はいつまでユキにこだわって追いかけるのかな?

13巻からは新しいお話が始まっていますが、いつかユキや奈々も再登場するのか、さすがにこの二人のお話はオシマイなのか、この先も読んじゃいそうです。

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