ときめきのいけにえ

『ときめきのいけにえ』はうぐいす祥子さんの作品です。時は1989年。ノストラダムスの大予言で世界の終わりがくるといわれている年の10年前。神業寺マリは兄と弟、父母と家政婦さんの6人で屋敷に住んでいます。

マリは漫画オタクの陰キャです。イケメンで好男子だけど頭はからっぽの花水木に憧れています。

ここから先は、ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

花水木くんが轢き逃げにあったときにマリが助けたことから、花水木くんはマリを好きになり告白します。マリの親友たちも応援してくれますが、マリには秘密があって花水木くんの想いに応えることができません。

マリの父は新興宗教の信者。教団に指示され、若い女性を拷問して殺しています。その役割は世襲。マリに跡を継がせようとしている父は必要以上に他人と親しくするなというのです。

かつては兄を跡継ぎにと考えていた父ですが、兄は一線を越えて有害な存在になったとして地下牢に閉じ込めています。それが不満な弟のサトルは兄を逃します。

殺人鬼が世に放たれ、花水木の級友の姉は殺人鬼のアジトに閉じ込められます。姉を探しに来た級友と花水木も閉じ込められたところに、兄を探しに来たマリが合流し、結果的にマリの損座級友と姉、花水木を助けます。殺人鬼は兄ではありませんでした。

兄はむしろ正気を取り戻してサトルを利用して家から逃げたのでした。花水木たちとマリが助かったことがニュースになり、神業寺家の存在が世間に知られてしまったことから、教団は神業寺家から生贄を殺害する役目を奪うことにします。そこに、神業寺に恋人の命を奪われた男が復讐に入り込み、父母とサトル、家政婦は殺されます。マリも殺されかけますが、マリに神が憑依し、復讐者たちを異次元の方法で殺します。しかしマリは花水木に声をかけられたことで正気を取り戻します。

神業寺の生き残りは兄とマリだけになりました。兄によると、1999年7月に君臨するという化け物はマリに憑依したといいます。それでかえって教団から解放されたマリは、親友たちと共に、花水木との楽しい学園生活を満喫できるようになったのでした。

うぐいす祥子さんの作品は『悪い夢のそのさき…』を読んだことがあります。うぐいすさんの長編を読みたくてこの作品を選びました。ためし読みをしてみると、陰キャの主人公が陽キャの男の子からいきなり告られるという展開。うぐいすさんの作品なのに学園恋愛もの?とびっくりしつつ購入してみたところ、パパが若い女性を惨殺。しっかりオカルトしてました。

1巻のあとがきで、これはラブコメです、といううぐいす先生。え、ラブはそうなんだけどどこらへんがコメ?と一瞬思いましたが、恋のライバルである(?)美少女のレナちゃんが武術の達人で性格がストレートに悪くて、マリを陥れるために花水木とマリを遊びに誘うのに花水木とマリは生命の危機にあっていてレナをすっぽかしちゃうとか、マリをいじめようと思ってるのに1人で何時間も待ってるとか、胸糞いじめ展開かと思っていたらいつの間にかいじめっ子がピエロちゃんになっているところが、じわっと笑えて、ああたしかにラブコメなんだなー、と思わされます。

殺人鬼はどう考えても狂ったおにいちゃんだろうと思ったのですが、級友の姉が手首を切られちゃったものに生き残って閉じ込められているとか謎展開だと思っていたら、心を病んでしまった男でした。精神科医に「あんたが逃げさせなければ誰も死ななかったじゃん」とつっこみが入ったりして、ここもコメディ展開なのでした。

お父さんや家政婦さんや殺人鬼のせいで人はいっぱい死んでいるし、それも苦しんで死んでるし、マリちゃんに1999年7月に現れる化け物(神?)が乗り移った時の殺し方も凄まじい惨殺だし、ずっと微笑んでいて心がどこかにいってしまっていたお母さんが死に直面したところで「マリ、逃げて!」と叫んだりするのも鬱天開だし、憎たらしいサトルだけどちょっと浅はかだったりするのも決してコメディ展開ではないのに、どこかでコメディと感じてしまうのは、設定自体がぶっとんでいるからでしょうか?いえ、やっぱり作者さんの力量ですね。ホラー作家うぐいすさんのコメディ世界を満喫できて楽しかったです。

冴えない陰キャとして描かれているマリちゃんですが、目がかわいくて、殺人に司られた家の中でその状況に苦しみながらも、花水木くん似のヒーローが現れる学園ロマンスの漫画を描き、親友2人の批判をちゃんと受け止めてしっかり作品を描いて賞をもらう、という素直なで地道な性格にも、なんだかほっこりしてしまうのでした。

花水木くんが、轢き逃げにあうエピソードは、もしかしたら深い設定があってつっこめばもっとミステリーな展開があったのかもしれません。3巻のあとがきでうぐいすさんは「超長編にもできる作り込みをしたけど1巻が賣れなかったから打ち切りがきまった」と書いていて、そこまでは描けなかったのかもしれません。そのあたりが読めなかったのは残念です。

女子校に行っていた私にはよくわからないのですが、花水木くんがマリちゃんに告白するのはやっぱり驚きで、漫画オタクでトリオ・ザ・ダークネスと評される3人組の1員で、前髪が邪魔な暗い感じ地味な女の子の良さを見抜いて付き合いたいと思うイケメン少年って実際いるのかな?と思ってしまいました。中学生ぐらいって、顔がいいとか、雰囲気が華やかとか、人気者だとか、頭がいいとか、そんな外面的なわかりわすいところに惹かれそうな気がしてしまうのですが。どうなんですかね?私には一生の謎です。

でも花水木がマリを好きになったのは、轢き逃げにあったとき、マリが救急車を呼んで、救急車がくるまで手を握って励ましてくれていたことを実は花水木が覚えていたからで、美少女のレナを避けているのは性格が悪いことを隠していなかったころのレナを覚えていたからだというのがわかるので、頭はからっぽだけど顔と性格がイケメンの花水木の気持ちの動きとしてはちゃんと説得力があります。

「ときめき」の「いけにえ」っていったいどういうこと?と思うタイトルですが、タイトルどおりラブコメしているグロありホラーで、とっても楽しかったです。

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