秘十村

『秘十村』は漫画 宗方馨さん、原案 白輝蓮さんのこわーい作品です。ページをめくるだけでショッキングな世界に引き込まれます。

拓哉と未希は行方をくらませた仲間を探して、存在しない村に迷い込みます。そこは結界に囲まれ、一度足を踏み入れると脱出不可能な場所。

ここから先はネタバレなのでご注意ください。

秘十村 漫画 宗方馨 原案 白輝蓮 講談社

村の周囲の森や村の家屋には化け物が住み着いています。行方不明になっていた仲間たちは神殿を拠点とし、何故か女性を連れ去る7人の覇の子を警戒しつつ神殿に納められた古文書を読み解き、結界から抜け出す方法を模索しています。

村に入ったときに未希を連れ去られた拓哉は仲間と一緒に覇の子の本拠地に未希の救出に向かいますが果たせません。

実は仲間の一人政樹が覇の子と通じていて、未希を妊娠させ、8人目の覇の子を産ませようとしていたのでした。異常な土地の効力で未希は早々に子供を産み落とします。その子は覇の子の呪いをかけられ、最強の覇の子ハッカイとして産まれてきました。

ハッカイは未希を母、拓哉を父と呼びます。政樹がまだ村に来る前に未希に遠方から呪いをかけていた頃に既に未希と拓哉は結ばれていて、ハッカイの父は政樹ではなく拓哉だったというわけです。

ハッカイの力で結界から抜け出す未希と拓哉。彼らをとりにがした覇の子たちですが、もうそのことは問題ではないとほくそ笑みます。最凶の覇の子ハッカイが結界から出たということは、強い呪いがこの世に解き放たれたことを意味するからです。

うーん。あらすじを書くのが下手でごめんなさい。これはネットで語られる呪の怪談「コトリバコ」をモチーフにした恐ろしいお話なのです。コトリバコは以前、きさらぎ駅や異世界ホラーと一緒にまとめ記事で読んで背筋を凍らせたものですが、いま探そうとしても何故か私はうまくみつけられません。インターネットの世界でも旬ってあるんですね。

この物語は、秘十村にまよいこんだ仲間のうち小さい子供が無惨にも殺されるところから始まるのですが、ページをタップするといきなり男女の性交シーンになります。初めての体験に緊張する女の子。おちゃらける主人公。初っ端からサービスシーンか、とげんなりしますが、実はこの行為は重要で、ハッカイが政樹の子ではなく拓哉の子であることを示すために必要なシーンなのでした。

そのあと拓哉は結婚の許しをもらうため未希の実家を訪ね、父親に追い払われそうになりますが、ここで庭に亡くなった犬の呪詛を感じて「イタコを呼びます。お祓いしましょう」と父親に言います。犬に恨まれる覚えのある父親はそれを受け入れ、なし崩しに拓哉を受け入れます。ここがまず違和感。娘のBFが「呪詛」とか言い出したら普通塩まいてけちらしますよ。でも父親が受け入れる事で、この世界はそういう世界、呪詛が身近にある世界なのだということがわかります。

これは仲間も同様で、オマジナイで目隠しをして独特の服装をした巫女さんが普通に仲間の中にはいっています。少なくとも他の女子は普通にちゃらついた子たちなので、普通の世界だったら巫女さんは仲間にしないっていうか距離をおかれるでしょう。ここはそういう世界なんだとハッキリわかって、これから何を読むのかという覚悟をちゃんと読者にもたせてくれます。

覇の子が拓哉の前に現れるシーンは本当にこわいです。見開きのページに風景が描かれ、遠くに出現した覇の子が一瞬で目前に迫り、手を伸ばしてくるのです。スマホだから見開きページは2回に分けて表示されるのでショックはちょっと緩和されますが、それでもタップする手が震えるほど迫力がありました!すごい演出力!

覇の子は7人いて、一人ずつ階級があがって呪力が強くなっていくので、一人ずつ倒していく話かと思ったら、途中で仲間の巫女さんが倒されてしまったのでどうするんだろう、と途方に暮れましたが、一人ずつ片付ける話にはならなかったのでちょっとほっとしました。でも、それぞれ違うレベルの力を持った個性的な覇の子それぞれが活躍するところをもっと見たくもありました。バランスが難しいところだと思います。

他の女の子たちはこんな極限状態にありながら覇の子や悪鬼との戦いを巫女さんと男子に任せきりで無意味に嫉妬しあって諍いをおこしている、と思ったら実はこの土地は子供を産ませるため、男女の性欲を高める呪いがかかっているということで納得しました。

政樹の立場は、伏線はあったのですが私は気づかず、何事!?ていうか誰だったっけ!?と思いました。自分の思い込みに狂ったストーカーとコトリバコの組み合わせは面白かったと思います。

ハッカイが産まれてからは駆け足な気もしますが、ダラダラするよりよかったと思います。ハッカイは自分の父母をとても大切に思っているようなので、未希と拓哉は安泰そうですが、ハッカイが世に放たれたことで、秘十村でおきたよりももっと恐ろしいことが、とめどもなくこの世に広がってゆくのだと思わせるラストも好きです。

彼女のお父さんに会うのにも全然緊張しない主人公拓哉のひねた表情や、呪詛やその対策が当たり前の世界観を楽しめないとこの物語は楽しめないと思います。コトリバコのお話は知っていたほうが楽しめるでしょう。

暗くて重たい空気と呪詛を軽妙にかわそうとして交わしきれない拓哉のつくる空気を楽しみました。

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[著]宗方馨 : 白輝蓮

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