イケニエ屋

『イケニエ屋』はDr.イムの作品です。人々の命を要求する神と交渉し、最小の生贄を捧げることでその他の人々の命を救う、人外の存在です。

イケメンで、白と黒のツートンカラーの髪をしたナイ(無い)もイケニエ屋。ちょっとシニカルな性格の彼は、生贄を選ぶよう伝えられた人間たちの感情のぶつかり合いを楽しんでいるフシがあります。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

イケニエ屋 Dr.イム 朝日新聞出版

ナイはムウ(夢生)と組んで行動しています。パニックになって騒ぐ人々をなだめようとするムウを押し留めて人間模様を楽しむのがナイのスタイル。

そのままお話が進むかとおもいきや、ナイがイケニエ屋になった経緯や、イケニエ屋がどうやって荒ぶる神に交渉するかなどが語られます。

最後は宇宙の彼方から出現した神への大量のイケニエの供出が必要となりイケニエ屋たちもパニック状態になりますが、ナイはなんと、地球の神すべてをイケニエとして捧げ、事態を収めるのでした。

神がいなくなった地球ではもうイケニエ屋は必要ない存在。ナイは人として生きることを選びます。

Dr.イムがあとがきでかいていましたが、ベースにはラヴクラフトのクトゥルフ神話が使われています。ナイがイケニエ屋として正体を表すときの姿もそれがベースらしいです。私はクトゥルフ神話には興味はあるものの、なんだか怖い気がしてずっとスルーしてきているのでなんともいえませんが、それでも、このイケニエ屋の世界はとっても魅力的に思えました。クトゥルフ神話は怖そうなだけでなく、いろんな人が書いていていまから簡単に入り込めそうな世界とはおもえないのですが…クトゥルフ神話の世界から新たに自分の世界を作ったDr.イムに拍手です。

個々のイケニエのお話もそれぞれ好きですが、アイドルちゃんが乱暴されちゃうのがすごくかわいそうで悲しかったです。一番好きなシーンは、もうお迎えがいつきてもいい的に言っていた老人たちが、絶対にイケニエになんかならない!というところ。人生ってなんなんだろう、霊魂ってあるのだろうか、輪廻転生ってあるのかな、前世で犯した過ちを今後の転生で償っていくってほんとにあるのかな、とか、キリスト教的に死んだら眠っていて最後の審判のときに目覚めて自分の罪と向き合うのかな、とか、浄土真宗的に死んだらその時点で成仏するのかな、はたまた死んだらすべて終わりなのかな、とかとか、生きることや死ぬことについてはいろいろ考えますが、やっぱりどんなに年をとっても自分から死んだりするもんか!という老人たちの姿はめちゃくちゃ好ましくて、このお話大好きでした。

人間の入れ物のナイのビジュアルも好みだし、頭がパカっと割れてとんでもない実態がでてくるのも好き。ムウが萌え系なのも好き。いくらでも続けられそうなお話だけど3巻で終わってるのも好き。これからのDr.イムの作品も楽しみです。

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[著]Dr.イム

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