お人形さん

『お人形さん』はワタナベチヒロさんの作品です。莉愛が砂でお人形をつくるお話です。お人形にはかりそめの生命が宿ります。

最初の話はダメ女に連れられた子供の話。ママが頼る先の男によって運命が変わってしまう男の子。

この先はネタバレなのでご注意下さい。

お人形さん ワタナベチヒロ wwwave comics

少年は死に、莉愛によってお人形にされ、生前唯一優しくしてくれた男性の元を訪れます。少年の遺体は彼によって見つけ出されます。

他にも、妻が夫の浮気相手に殺され、莉愛によって一晩だけ蘇り、妻の座におさまっていた浮気相手が殺そうとした我が子を助けるお話などがありますが、基本的には理不尽に殺されてしまった人が莉愛の手で一時的に人間になって最後にやりたいことをやる話です。

でも、ある事件がきっかけとなって莉愛は自分のやるべきことを思い出します。莉愛自身、理不尽に殺された子供。莉愛は別の事件をきっかけに知り合った刑事とともに自分を殺害した犯人を追い詰めます。

犯人は死にます。すると、莉愛に人形をつくる力を与えた不思議な青年は犯人にも興味を持ち、彼にも莉愛とおなじ能力を与えます。莉愛の姿を使って、ネガティブな人間にとりついて悲惨な犯罪を行わせる犯人。莉愛と刑事と、たまに死人が見えるという少年は犯人が行っていることに気づき、やめさせうと後を追います。

最後には燃え盛る火の中で対決する犯人と莉愛。犯人の体は燃え、やるべきことを果たした莉愛も姿を消すのでした。

理不尽に殺された人が甦る話なので基本的に鬱展開です。主人公も残忍に殺されていて、しかもそんな犯人が生きている人間にとりついて悪事をさせ、それを主人公たちがとめようとする話に変わっていくので、痛快な復讐劇というわけでもありません。

魅力的なのは、無表情にいつも砂場にいる莉愛です。砂場にいるとは思えないひらひらとフリルのついた黒い服を着ていて、大人びた表情をし、大人びた口調で語りますが、そのわりに子供に誘われてプリキ○アごっこなんかも、無表情のまま楽しくやったりしています。子供なのか大人なのかわからないけれど、不思議な力を持たされて、「私になにかくれた人」を理由として人形にする感じがよかったです。

そんな淡々とした主人公にやるべきことを思い出させるのが、まだ人形の体もでききらないうちから何をするのかもわからずただ助けなきゃ!約束したから、と直情的にうごく殺された少女だったところも悲しかったです。

刑事さんのエピソードも、彼が莉愛と親しくなり、刑事としての熱い心をキープして、犯人を追うための、悲しいけど上手いエピソードだと思いました。

基本的にあまり人目につかないけれど、きにする人には姿がよく見えてしまうというのもおもしろい設定でした。

ラスト、少年がまた会える気がする、というのは私も思って、好きなラストでした。

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