人狼ゲーム クレイジーフォックス

『人狼ゲーム』は川上亮さんの作品で、漫画では小独活さんの作画で『人狼ゲーム』『人狼ゲーム ビーストサイド』『人狼ゲーム クレイジーフォックス』がでているようです。

どのお話も好きなのですが、私は特にクレイジーフォックスが好きなので、今日は、トラウマを持ったちょっとクレイジーな女の子、あやかが主人公のこのお話について語りたいと思います。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

人狼ゲーム クレイジーフォックス 原作 川上亮 漫画 小独活 竹書房

前2作では突然拉致られて村人として人狼ゲームに参加させられた愛梨がゲームに勝って生き延びる話、そして毎晩人狼として村人を殺すうちに、このゲームに取り憑かれてしまい運営側にまわることを求めるお話だったのですが、クレイジーフォックスでは主人公のあやかは新しい種族、狐を割り当てられます。

毎日20時に誰が人狼かを投票で決めて命を奪い、夜は人狼が村人を殺していくのがゲームのルール。村人と人狼の残り人数が同じになったときに狐が生きていればキツネの一人勝ち。それ以外の場合は人狼を絶滅させれば村人の勝ち、同じ数ずつ残ったら人狼が勝ちです。村人にはいくつか役割があって、たとえば特定の誰かが人狼か村人かを占うことのできる予言者などがいます。

あやかは幼い頃から義理の父親に性的虐待を受けていて、しかも母親が見て見ぬふりをしていることを知っています。実の父親に可愛がられた記憶はあって、少しでも似た空気を持っている男性にはすぐ感情移入してしまいます。

あやかが目覚めたのは二度目のゲームの冒頭。前のゲームを一緒に生き延びた仲間(?)やクラスメイトがいるなか、あやかはいきなり多喜川という少年に一目惚れします。運命の相手だと闇雲に信じ、ふたりで生き残ってこの場を出ようと決意します。そのくせ、多喜川と目が合ったらついそらしてしまうなど、積極的なアプローチはとれません。そんな中、早速生き残るための駆け引きが始まります。

今回の人狼は3人。そのうちひとりは前回あやかと一緒に生き延びた有希。二人目は健太郎。ところがもうひとりは村人を殺す時間になっても姿を現しません。実は最後の人狼芽亜里は前回の人狼ゲームで健太郎や多喜川と共に生き抜き、固い絆で結ばれていて、健太郎によって守られていたのでした。

様々な駆け引きと殺人の末に、多喜川が芽亜里を愛していると知ったあやかは絶望します。一方、3人目の芽亜里が人殺しを免れぬくぬくと過ごしていたことに苛立った有希は、結末がわかっていながらも、人狼と村人が同数となる投票をします。その結果、キツネであるあやかを残して全員が死に絶えます。

あやかはあんなに執着していた多喜川の頭を足蹴にしますが、首の落ちた体にそっと自分を抱かせて、実の父親に思いを馳せます。

あやかのトラウマは最初から示唆されていますが、多喜川への執着は一目惚れという形で表現されるので、実の父の代替であることには私は気づかず(するどい読者さんはすぐ気づくのでしょうけれど)、あやかがすごく変わった、エキセントリックな子だと感じました。実際、有希も誰をターゲットにするかで健太郎と相談していりとき「アイツはマジでヤバイ」と言っています。何かがおこったときにどんな反応をするか全く読めないというのです。

主人公がすごく変わった子で、「生き残った者は1億円を与えられ、それ以外の者は何も得られません」と最初に名言されていて、自分がキツネだったら生き残るとしたら自分しか生き残れないのはルール上明白だと思われるにもかかわらず、「多喜川くんとふたりで一緒にここを出るの」と決めつけて、自分を救うのと同じくらいの熱意で多喜川君を救おうとするのが、論理的に全然わからなくて、そのわからないところがまさにクレイジーフォックスで、おもしろかったです。

同じ狼の立場の健太郎が芽亜里をかばって何もさせないのはわかるのですが、多喜川は村人なので、芽亜里は多喜川には自分を村人だと信じさせていたのでしょう。かわいいけど頭悪げな少女としてずっと振る舞っていた芽亜里が魔性の女で、結局そのことが反感をかって、有希に、自分の命を捨ててまで芽亜里の命を奪うという決断をさせたのもおもしろかったです。

『人狼ゲーム』は、ありがちなデスゲームかもしれません。でも、『人狼ゲーム』では最初は誰も殺したくなくて、投票のときに自分を選んだりしていた愛梨が恋をして、その相手が人狼だと見抜いて自らの手で殺し、2回目の人狼ゲームでは人狼側として参加して冷静に人々を陥れながら最後には失敗して正体を見破られました。それなのに、過去に自分がなんの気なしにやったことが一人の少女の心を揺り動かし、その結果として相手の少女が自らの命を断っても愛梨を生かすことを選びました。理由は全然ちがうけど、誰かの感情的な選択で主人公が生き延びることになるのは、クレイジーフォックスと同じかもしれませんが、どちらも別々のストーリーとして読み応えはありました。そして、愛梨が、もう普通の日々には戻れない、運営側に入れて、とお願いして受け入れられたらしいラストも好きでした。

それぞれの感想を書こうかとも思ったんだけど、この3つのお話を別々に論じる方が違和感ある、と感じたので、総合的な感想を書いてしまいました…

小説ではさらにいろいろ枝葉末節…じゃなくて盛者必衰かな(?)が描かれているのでしょうか。

とても面白かったです。

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人狼ゲーム クレイジーフォックス 1

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[著]小独活 [原作]川上亮

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