師匠シリーズ−師事−

『師匠シリーズ−師事−』はネット小説を漫画家した作品。原作はウニさん、漫画は片山愁さんです。大学生の主人公が師事する先輩、オカルトの師匠とのエピソードをまとめたものです。

随分前に全7巻のうち2巻を読んだことがあったのですが、ネットまとめで師匠シリーズを読み始め、漫画でどう表現されているかを改めて見たくなって、再読含めて全巻を読んでみました。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

原作 ウニ 漫画 片山愁 少年画報社

物語は、1990年代後半の地方都市の大学生である主人公の課外活動のお話です。私の学生時代と違ってインターネットが一般化し、ネット上でいろんなフォーラムが活発に活動紙、オフ会なども頻繁に行われていた頃です。ちなみに私の学生時代はJunet時代。筑波にあった国立大学の文科系情報学の学生だった私は、筑波の研究機関の方たちが盛んにやり取りしているのをネットワークって何?網って?状態で雑談だけ読んでました。なつかしいなあ。

話がそれました。20歳近辺でどんなネット環境にいたか、それとどんな距離でつきあっていたかによって学生生活に時代が色濃く現れるな、ということが言いたかったのです。

同時期に原作(まだ読み切っていません)と漫画を読んでしまったので、感想が混ざりがちですが、ここではできるだけ漫画の感想だけに絞ってお話したいと思います。混ざっちゃってたらごめんなさい。

主人公はオカルトサークルにどっぷりつかったうえ、ネットでオカルト系のフォーラムにはまってリアルでも積極的にフォーラムの人たちに会い、ハンドルネームで呼び合っています。師匠はインターネットとは距離を置き、リアルなオカルト現場でわざわざ自分の身を危険に晒して楽しむタイプです。師匠の彼女、歩くさんは師匠が自分よりすごいというオカルト女。主人公が入り浸っているフォーラムの主要メンバーで、美人だけれど生気がないという設定ですが、漫画では普通に華奢で可憐で素直で師匠に強い思いを寄せている女の人です。主人公にとってはフォーラムで直接仲間になっていたら師匠の彼女だったという存在。

もう1人の主要人物は京介というハンドルネームを持つ長身のショートカットの男前の美女。なにやら長髪のウィッグをするバイトをしています。主人公とはフォーラムの先輩後輩同士ですが、師匠とも面識があって相性は最悪。主人公はなぜか師匠と京介さんの小競り合いを見るのが好きで、よく強引にふたりを引き合わせて楽しんでいます。ほかに話を推進させるきっかけにもよくなるみかっちという先輩などもいます。

お話は怖い体験、不思議な体験の連なりです。主人公は積極的に怖い話にからんでいきますが、基本的には師匠、歩く、京介の誰かがうごくことによって何かが起きている印象があります。

怖い話も多くて夜中にぞっとしながら読みましたが、基本的には師匠や歩く、京介は見える人、主人公はちょっと見えていたのが師匠たちの影響でより敏感になってきた人、みかっちなどは見えない人という感じで描かれていたので「大丈夫、霊がいたとしても私は見えない」と自分に言い聞かせながら読みました。

ただ怖い話だけでなく、大学の屋上で目をつぶって飛んでみる話などもありました。屋上の端で目をつぶって回って方向感覚を失ってから思い切り飛んでみろ、と師匠に促されえる話。ためらう主人公に、師匠は「大丈夫だ、声をかけてやる」と言います。主人公は声の方向に飛びますが、飛んだ瞬間、師匠が屋上の外の空間に浮いていてそこから声をかけたというあり得ないイメージが頭を駆け巡ります。死んでしまう、そう思った瞬間、足が屋上の床につきます。いま何を感じた、と問い、答えを待たずに独り語りをする師匠。もう一度やってみろと言われ、今度は声をかけない師匠。長い時間のあと、主人公は目を開けて師匠を見ます。静かに帰ろう、という師匠。何故かこの話が最も印象に残りました。

ラストは師匠が失踪してしまいまします。京介さんは、自分たちが見ているのは光だが、あいつが見ているのはきっとそうではない、と言います。闇?闇への扉を師匠が開くイメージを持つ主人公。

そして歩く、京介、みかっちは卒業し、主人公は上級生に。オカルトサークルに入った1回生の女子学生との間に、師匠と自分のような関係も出来はじめます。そんなある日街で師匠の後ろ姿を見た気がしますが、見失ってしまいます。

実は、原作のネット小説の始めのほうでも、師匠が失踪したことは言及されていて、原作を読み進めていると、師匠はそれまで自ら歩み寄っていた闇に捕まってしまうのだろう、と予測しています。だから漫画でもそうなるのだろうと思っていたのですが、漫画で読むと、師匠は自分の意志で失踪して、どこかでまだオカルトに関わっているように見えます。ドアを開けて闇の向こうに行ったイメージよりも、街で師匠を見かけたイメージのほうが強く心に残ってしまうからです。

原作を読まずに2巻まで読んだときには正直あまり強い印象が残らなくてそのまま放置してしまったこの作品ですが、原作に触れてから読むと、主人公やその他の登場人物が生き生きと描かれていて、勉強に専念していない大学生がサークルやネット人脈に入り浸って青春を謳歌する姿が新鮮でした。京介さんに淡い思いを寄せながらまったく相手にされない様もいい感じです。怖くはあったのですが、オカルトとしてより大学生の青春譚として楽しませてもらいました。片山さんの描く人物は、私が原作から思い描いた登場人物と少し違うところもありましたが、イメージを損ねることなく、とっても魅力的でした。

これから原作をさらに読み進めて、漫画とはまた違った世界を楽しもうと思います。

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師匠シリーズ 〜師事〜

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[著]片山愁 [原作]ウニ

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