はっぴぃヱンド

『はっぴぃヱンド。』は有田イマリさんの作品です。かわいらしいほのぼのとした絵柄の表紙とタイトルから、どんな幸福なお話が読めるんだろうと期待感が高まります。

1997年6月4日、茜は姉が教師を勤める学校のある環ヶ原に引っ越します。興奮する茜。気持ちよく迎え入れてくれるクラスメイトたち。クラスは小学生のさやかを含むいろんな学年の子が混じっています。毎日日記を書いて提出しろと姉から指示される茜。どんどん皆と仲良くなっていく幸せな日々をつづる茜。

ここから先はネタバレなのでご注意ください。

はっぴぃヱンド。 有田イマリ スクウェア・エニックス

7月10日、突然姉から東京に帰ることが決まったと言い渡される茜。ショックのあまり日誌も書けません。翌7月11日、お別れのBBQ大会が行われることになりました。気分じゃない茜にみんなが近寄ってきます。「茜、お前昨日日誌をかかなかったな。連帯責任で罰だ」と声をかける姉。そして茜は皆に串を刺され死にます。皆も連帯責任だからと串を刺し合います。

ふと気づくとまた田舎に編入してきた茜。日付は6月4日に戻っています。皆が歓迎してくれるのも同じです。でも7月11日になるとまた茜は殺されるのです。

そしてまた6月4日。茜はさやかも以前の記憶を持っていることに気づきます。タイムリープしている?茜には記憶が引き継がれるようですが、さやかは毎回さやかだけが侵入できる施設に残されたメモを見て状況を把握しているようです。これはいったい何なのか。秘密をあばこうとする二人は、これがタイムリープではなく、村だけが1997年に保たれ、自分たちのクローンを使って同じ状況が何回も繰り返されていることを知ります。毎回7月11日には全員が殺され、また同じメンバーで6月4日からの毎日が繰り返されているのです。

真相を探る過程で茜とさやかは何度も死を経験しますが、キーを握るらしい人物に出会います。カエルとヘビのキグルミを身に着けた人物です。茜は2048年問題と呼ばれる出来事があり、それに関連してこの実験が繰り返されていることを知ります。

何回目かの実験。実験に登場するのはいつも姉と子どもたちですが、その回の姉は、茜の姉としての記憶もあり、クローンを使った実験が行われていることも把握している見届役を担っていました。茜はそれに気づき、協力を求めます。茜が村にいる間に、他の生徒を連れて村から出て、何が起こっているかを確認して欲しいと頼んだのです。村の外に出た姉と子どもたちは、隣の都市に誰もいないことに気づきます。そして季節外れの赤い雪が降り、全員が死亡します。

茜たちは、キーを握る人間を敵対者だと思っていたのですが、この人物は実は茜たちが死なないための方法を模索するためにこんな実験をしていたのです。2048年問題とは、AIが人間を凌駕してしまうという問題。AIは様々な手段で人間を攻撃し、2052年7月11日に降らせる生物兵器、赤い雪、茜雪で人類を滅亡させるのです。

茜はタイムマシンで2052年から1996年に戻り、未来を変えるための実験を繰り返し行っているのでした。毎回ちょっとずつ変化を加えて実験の成功を目指します。前回(このお話)での特徴はさやかにスタンガンを持たせたこと。今度の変更は茜を2人にすること。

1997年の環ヶ原には、本来いないはずの人物が一人だけいます。2021年に生まれて27歳のときに初めて茜と会うはずの人物、さやか。今回のタイムリープは368回目。変えられない未来があるならずっと一緒にいようと誓ったのだから、この実験をするのだ、今回は何して遊ぼう、と心踊らせます。

おまけ。冬になった村。珍しく降った雪にはしゃぐ生徒たち。でも茜は雪が少し赤いことに気づきます。さやかはつぶやきます。「この冬に次なんてないんだよ」

このマンガを初めてよんだとき。ほんわかした絵とほのぼのした田舎の生活、毎日の日記にちょっと単調な気がして「きっと友情物語が繰り広げられるんだ、とりたてて好みではないかも」とページを閉じて放置していたのですが、ある日ふともう一度読んでみよう、と最初から読み進めていくと、これがとんでもないホラーでした!トラウマになりかけた皆の恐ろしい顔と突然の殺人!えなんで?なんでこんなことが?怖すぎてそこから先はもう一気読みです。

タイムリープかと思いきや実際にはクローンを使った実験で、しかも最後まで読みとやっぱりタイムリープのお話でした。上の説明で多分一番わからないのは「茜を二人にすること」だと思いますが、これは私もちょっとよくわかってないからです。

最初に村に来たときの茜は、村の入口のトンネルの中で血まみれの幽霊を見ます。(この時点でこの物語がホラーだと気づくべきでした)が、今回は無傷の茜と車の中の茜が目を合わせます。おそらく前回の車外の茜は茜雪にやられて死ぬ茜で今回はいきてるんだけど、1996年に戻ったときの茜は二人いて、ひとりはカエルとヘビのキグルミを着た謎の人物になって、もうひとりは「二人目の茜」になって、ってことはタイムリープした茜は二人いる???んーー。読み取れませんでした…私のおバカ。

しかも、さやかの本体は「変えられない未来があるならずーーっと一緒に」って言ってる。未来が変えられない前提で、クローンの自分のことも茜のことも遊びだと思ってタイムリープしている???んんん???難しい。理解していらっしゃる方にはバカみたいですね。でも、どうとでも解釈できそうなこの部分を含めてのホラーだと思って噛みしめてみました。

そしておまけマンガ。環ヶ原に冬がきたということは、7月11日に死ぬ運命が回避されたことを示します。途中で終わらせなくてもよい夏が来て、季節が変わったということは、実験がうまくいって、外の世界でもAIに人間が殺されていない世界があるのだと思いきや、茜雪が降るという…えー、やっぱりよくわからない。っていうか環ヶ原の実験はAIとの戦いを防ぐための何の役にたつの?7月10日に茜が日記を書けば日々は続くの?でも茜雪で終わるの?それまでAIに隠してたのに見つかっちゃったっていうこと?

わー。わからなーい。私、頭悪い。

というわけで、正直どういうお話だったのかすらわかってないのですが、ほのぼの系からホラー系へのギャップがとにかくすごいのと、タイムリープと思わせて実は時間を経ているとか、もう死んじゃったさやかの幻想と会話するとか、そんなところが面白くて(怖くて)インパクトがあって楽しんで読ませてもらいました。ラストがモヤッとしても大丈夫な方向けの作品ですが、私は好きです。

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