復讐の未亡人

『復讐の未亡人』は現在15巻まで出ていますが、最初は1巻読み切りだったと思うので、1巻限定で感想を書かせていただきます。黒澤Rさんの作品です。

気だるそうな美女の表紙がとにかく気になって読んでしまいました。

ここから先はネタバレなのでご注意ください。

復讐の未亡人 黒澤R 双葉社

密は超有能な派遣社員。職場ではうまく社員の仕事をカバーし、パワハラ上司は不適切な関係で籠絡しています。他部門からの理不尽な依頼も、朝のジョギングで一緒になった社長にとりいることであっさり退けます。

そんな密の正体は、その会社に勤め、パワハラと過労といじめで亡くなった夫の復讐を狙う未亡人。復讐を遂げるために職場に入り込んで関係者全員を嵌めて首尾よく復讐を遂げます。

職場で唯一夫を慕っていてその意志を継いでまともな職場へと正そうとする社員だけには自分の正体を明かし、その男と再婚するのでした。

密は美人です。細い腰と美しい胸を持つ肢体を惜しげもなく復讐相手たちに与えます。復讐に協力する義理の弟とも関係を持ちます。最も憎い女性社員には、結婚式の余興に彼女の浮気の現場ビデオを流すという方法をとります。

復讐はわかるんだけど…きもいパワハラ上司も含めて男と寝まくるのはどうやら復讐のためだけじゃなくて、密さんの趣味のようです。なので、夫の復讐のためにイヤな男にも体を許す、という悲壮感はこの物語にはありません。

そう考えてしまうと単調なはずのこの物語ですが、あとから続編が出て、いま15巻までいっているというのはやっぱり魅力があるからだと思います。

前述の通り、私は最初の巻しか読んでないので、その範囲でしか語ることができず、2巻以降の愛読者さんが私の文章を読んで、全然違う、と思うかもしれません。そしたらごめんなさい。もともとは単発で発表されたものだと思っているので、その範囲でも感想を書きたくなっちゃったんです。

魅力って何、というとひとつは復讐が果たされるカタルシスですが、それ以上に、密の見た目のキャラクターがステキです。ショートボブにきれいにカットされた髪、きちっとした服装、スーツの上からでも男性が細い腰に見とれてしまう華奢な体、でもワークアウトをしっかりしていて均整のとれた美しい裸体、どんなときも冷静沈着な所作、社員を凌ぐ有能さ、派遣社員としての身をわきまえた行動、ターゲットへの大胆な態度、何も強く主張してないのにミステリアスな空気。女性としてあこがれないところがありません。ただ、異様にセックス好きなところを除いて。

セックスシーンの多さはこの作品の特徴だと思います。結婚式でセックスビデオが流れるところもそうですが、これはサービスシーン?結婚式でのセックスビデオ披露は『悪魔だった君たちへ』原作 中津功介さん、作画 古場みすみさんでも使われていて、漫画ではこういうのって多いのかな。もし現実にあったら、花嫁さんは二度と立ち直れないほどのダメージをうけると思います。花婿との関係が壊れるのはもちろん、招待客に呼ぶほどの関係の人たちみんなに自分のそんな映像を見られてしまうのですから。職場の愛人の密に棄てられ家族にも棄てられて孤独死するのとどちらが辛いか、なんとも言えないところです。花嫁が密の夫にしたことは確かにひどいんですが、同じ職場で結局は見て見ぬ振りをしていた後輩への罰が罰を与えないことと結婚すること、というのがなんともバランスがとれてない気はします。

ともあれ、密は復讐を果たした。私はそれがこの物語のおしまいだと思います。つづきは次の話。いつか読んだらまた感想を書くかもしれません。かっちりしてて有能で沈着冷静な密に変わってほしくないな。

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[著]黒澤R

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