『怨画-ファントム・ビデオ-』は砂川どろさんの作品です。モノクロの絵に赤が印象的な表紙です。
渕上は漫画家。浦形が原作のホラー作品の企画を、編集の竜塚に見てもらい、いい感触を得てノッています。
ここから先はネタバレなのでご注意下さい。
浦形が考えたのは見ると呪われるという動画の話です。友人が話しているのをヒントに考えた話で、渕上は好奇心からモトネタになったURLを送ってもらいます。
それを見ると、文字化けなども表示される粗い動画が再生されますが、その動画は何故か渕上がいる場所にどんどん近づいてくるものなのです。ついに自分の後ろ姿が映ったところで振り返ると、不気味な歌を歌う異形の者たちは激しく顔をゆさぶりながら迫ってきます。同時に自分の顔や手が焼けただれていきます。動画の操作もできず、スマホのシャットダウンもできません。できるのは共有ボタンを触ることだけ。動画を共有すると、異形の者たちは消え、火傷のあともありません。ただスマホの画面には焼けただれた手で触ったあとがのこりました。
翌日、渕上はフードを深くかぶった竜塚に声をかけられます。焼けただれた顔と手「これ、何!?」と渕上に問う竜塚は何者か!い追われているようで怯えています。そこに建築資材が落ちてきて竜塚は絶命します。
一方、渕上のもとには、今度は焼けただれた足が迫ってきます。一度動画を見ると、最初の異形の者たちが消えても、今度はまた別の者が追ってくるのでした。
他にも犠牲者がでる中で渕上と浦形にわかったのは、共有した動画を誰かが見ると、最初の激しく震える者たちも、後でまた命の取り立てに来る者も消えるということでした。着実に犠牲を捧げれば、自分だけは助かるというわけです。
オカルト雑誌編集部などにも声をかけながら調べると、これはある宗教団体が仕掛けている現象であることがわかります。辛い死に方をした者たちの怨念を集めて人輪(じんわ)様という神をこの世に呼び出し、自分たちの望む世界をつくろうという彼ら。人輪様は黒い影のような姿を見せ始めます。
宗教団体の本拠地に乗り込んだ渕上と浦形と仲間たちのもとに、命を失った仲間たちも集まります。手をつないで人の輪をつくって人輪様の影を囲み、どうか怨みを捨てて優しいこころを取り戻してくださいと祈る渕上たち。
黒い影は消え、平安が戻るのでした。
渕上と浦形は新しい編集者にダメ出しされながらも、これからは人に希望を与える作品をつくろうと誓い合います。そんな中、消えたはずの動画のURLがまた…
かわいい絵柄に反してホラーでした。もちろん、タイトルも表紙もホラー以外の何物でもありません。1巻がRenta!で公開されてから表紙に惹かれてすぐ買って楽しみに続刊を待って読んでいた作品です。
昔はホラーは怖くて苦手でした。でも、Renta!ではデスゲームから借り始めたので、グロもホラーも大丈夫になっちゃいました。昔の『恐怖新聞』(つのだじろうさん)とか、漫画が部屋にあるだけでも怖かったのですが、Renta!はスマホやタブレットで読むからかな?怖いけどおもしろくて読んじゃいます。
『怨画』も、最初は怖くて、その一方でお腹が出た大御所漫画家の鬼脇先生とかかっこよくて、ワクワクして読んでしまいました。ただ、最終巻では「どうして教祖たちは人輪様をあやつれるんだろう?」というのがよくわからなくて、怖さがちょっと減っちゃいました。よく、一番こわいのは人間、といいますが、やっぱり意図がわからなくて襲われるほうが、悪い教祖さまに目をつけられるより怖い気がします。なので、わけもわからず、ただ、動画を共有しないと死んじゃう、だけど共有しちゃうと結局は誰かが死ぬことになる、しかも終わりはなくて、誰かが死んだ後でも二度目、三度目の取り立てがあってそれは死ぬまでずっと続く、どうしよう、と悩んでいる頃が一番こわかったです。
漫画家さんと原作者さんがでてきますが、作者の砂川どろさんはおひとりで描かれているのもよかったです。とはいえ、砂川さんが本当に一人の方なのかどうかは実際にはわからないのですが。浦形が渕上に「名前で呼んでくれた」「また浦形さんにもどっちゃったね」などと、あわーくラブラブした感じがでているのも微笑ましく、それでいてホラーの世界観を崩すこともなくてよかったです。