リアル炎上「GPS」

『リアル炎上「GPS」』は原作 神田翔太さん、漫画 紅徹さんの作品です。リベンジ法という、一般人が恨みを持つ相手に、3日間は殺さない限り何をしても構わないという法律がある世界のお話です。

お話はあるターゲット(リベンジされる相手)を主人公に進みますが、リベンジ法制定者、リベンジ法に反対する組織の場面もでてきます。面白そうなのですが、打ち切りになったのか、最初のターゲットの話が決着したところで話は終わります。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

リアル炎上「GPS」 原作 神田翔太 漫画 紅徹 マンガボックス

ターゲットは、被害者を名乗る人物の行政への申告で決められます。リベンジにはフォロワーとして認められた野次馬が参戦することができます。名城の恋人はストーカーからターゲットとして訴えられ、フォロワーたちに乱暴されて目しか動かせない状態にされます。そう、この法律はザルだらけなのです。法律として発布されていますが、実効性を持つのは関東のみ。関東圏外に逃れればフォロワーもリベンジャーもターゲットには手がだせません。そういう案件がわかると、ターゲットは法律が有効な場所からでてはいけないという条項が法律に加わるなど、グタグタです。

名城は常に法律の作成者へのリベンジを申請するとともに、ターゲットの逃亡を助ける組織に属してターゲットに連絡をとるなどしつつ、恋人の元に通っています。元凶の元ストーカーが病院に来たりすることもあり、心が休まりません。

お話はターゲットである結婚詐欺師坂木は騙した相手理穂に訴えられ、狙われます。あっさりフォロワーに捕まった坂木でしたが、理穂は3日間十分に恐怖を与えたいという理由で坂木を逃します。坂木にはGPSがつけたれていますが、わざと精度が低く情報共有にタイムラグがあるものをつけていて(理穂だけは正確な位置を把握できる)、フォロワーは翻弄されます。途中、元看護師で、フォロワーに襲われ悲惨な状態になったターゲットを数多く見てきてリベンジ法に疑問を持っている女性に助けられてリベンジ法が及ばない他県に逃げたりしますが、先にも述べたように法律が急遽変わって連れ戻されます。

追い詰められた坂木は名城の所属する組織を頼って助けられ、3日間を乗り切りますが、その瞬間まで追ってきていた理穂に切りつけられ殺されます。

名城は、このシステムは恨みを増幅させるだけの悪いシステムで、自分は絶対にこのリベンジ法を葬ってみせる、と決意を新たにします。というところで「完」のクレジットがでます。

本来はもっといろんなパターンのターゲットを見せて、名城の思いを軸にして、この法律をつくったほうの気持ちも表現しながらお話を進め、人間の弱さ、切なさを表現するお話だったのでしょう。

坂木はチンケでガラも悪く魅力も少ない結婚詐欺師だし、理穂はリベンジに気持ちが入りすぎていて坂木の苦しむ様をみたいと言ってわざと逃したりして、リベンジされる方にもする方にも感情移入しにくいところがこの作品の難点だと思います。感情移入できるのは、この方法に理不尽に恋人の自由を奪われた名城と、坂木をつい助けてしまう元看護師の水澤です。

名城は怒りを内に秘めているため人をよせつけないところがあるので、リベンジ法に対するストレスでどんどん太ってしまい、坂木を助けたことでフォロワーから半殺しの目にあわされる水澤はかわいそうです。坂木にもう少しいいところや詐欺師として抜けているところがあればこの法律の理不尽さが描けるのに、坂木は自分を助けてくれた水澤をもあっさり見捨てるクズ野郎なので、法律の理不尽さはちょっと表現できません。

理穂も、騙されていたときはよい娘さんだったのに、リベンジ法に関わってからは執念深い鬼のような女で、最後は自らの手で坂木を殺してしまうので、愛したり信じたりしていた自分との葛藤がみえなくて残念です。そこらへんは打ち切りになってしまったことと関連しているのかもしれません。

法律がグタグタなのに急に変えられるところはご都合主義でしたが、坂木の立場や行動は楽しめました。このグタグタはお話のグタグタにも繋がっているので、なんとも評価のしづらいところです。

坂木のお話が長すぎたので、もうちょっと短くして、本来リベンジされるべきじゃないターゲットのお話や、リベンジされて当然のお話や、ターゲットへのフォロワーによる制裁にも制限が加えられたり、名城たちが逃し屋として活躍できるお話を読んでみたかったです。そのうえで、法律の制定者と名城の対決を見て見たかった。

打ち切りになってしまって残念だった作品のひとつです。

にほんブログ村 漫画ブログ 漫画感想へ
にほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村


漫画・コミックランキング


レビューランキング

リアル炎上「GPS」(1)

リアル炎上「GPS」(1)

リアル炎上「GPS」(1)

[著]神田翔太 : 紅徹

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です