隣町のカタストロフ

『隣町のカタストロフ』は菅原敬太さんの作品です。ある日、ある3つの町の天と地がひっくり返ってしまうという恐ろしいお話です。

お話のメインとなるのは高校生の涼晴。学校にいっている間に地変天異が始まります。好きだった琴美は空に投げ出されてしまいます。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

隣町のカタストロフ 菅原敬太 双葉社

涼晴は友人らと助けを求めに隣町との境まで行きますが、平常の状態の隣町に足を踏み入れようとした同級生は上下から押しつぶされたようにその体を破裂させ死んでしまいます。

その他にも、この地変天異に翻弄されてる人々の姿がオムニバスで語られます。

そのうちの一人、アイドルグループ春風ラムネ隊のセンターを務めるまほりんは、彼女がセンターであることに不満を示した仲間二人を惨殺したあとデートを楽しみ、それを熱烈なファンに見つかったところで地変天異に遭遇します。最初はファンに押されているかに見えたまほりんですが、狂喜を宿した彼女は恋人も見捨て、ファンも抹殺します。

涼晴らはたまたままほりんと会い、請われて学校へと案内します。琴美のスマホに、何やら地変天異を予告するようなメッセージがきていたことを思い出し、スマホを取り返しに行くのです。まほりんは涼晴を好ましく思い自分のものにすると決めます。

琴美のスマホを探す涼晴は、この地変天異は一人の少女が慕うキクという男子生徒と猫の2人と1匹でこの世から消え去ろうとしたために起こしたものであることが分かります。キクは地変天異を終わらせるために、涼晴たちと少女の元へむかいますが、嫌いな人物は全部殺して空に投げ捨てたまほりんはこの世界が好きだからと、こっそり涼晴たちを追いかけます。

最終的にキクと少女と猫が空へと旅立ちます。すると地変天異は終わり、正常な世界に戻ったかのように見えた世界ですが、ついさっき空に落ちたはずのまほりんが、再び空から落ちてきて絶命します。涼晴は気づいて叫びます。「早く屋内に入れ!」と。しかし時はすでに遅く、地変天異が始まって以来空に吸い込まれていたものが再び地上めがけて落ちてきはじめ、最後は、今まで空に吸い込まれいたものが涼晴の目に見える形でまた地上に落ちてきなす。クルマ、建物、人々…

最初はオムニバスで、引きこもりになった元高校野球児のお話から始まります。なにがなんだかわからない、でも大変な状況。幼なじみの前で久しぶりに男気を見せる主人公ですが、残念な結末が待っています。この作品が菅原さんを読んだ最初の作品でしたが、一気にハマりました。

絵も個性があっていいのですが、とにかくお話が面白いです。限られた3つの町だけに地変天異が起こり、その地のひとたちにとっては空が底のない広い空間で恐ろしいものになり、他の地域からは空にモノが吸い取られていくように見えるシュールさがなんともいえず心に響きました。

メインの涼晴たちとまほりんの物語もオムニバスのなかのパーツのように始まりますが、読み進めていくとこの人たちがメインの物語になっているところも面白いです。

まほりんの怖さは3巻の表紙でも表されていますが、本当に常軌を逸しています。空に落ちそうになった彼女がしつこく涼晴の元に戻ってくるのも怖くて、ドキドキしながらページをタップしていました。基本的に自分には都合の悪いことは起きず、いつも希望がかなうのが当然だった彼女が空に落ち、ある地点で上下が急に元に戻って落ちていくときの気持ちってどんなだったでしょう。絶望的だけど自分は奇跡の星の下に生まれたと信じていそうなまほりん。絶望を感じる瞬間はあったのでしょうか。

商店街の娘が銀行員の彼氏にもて遊ばれていたことに気づいたお話では、お母さんがずっと空に落ちながら電話していました。高速で落下する中ではたして会話ができるのかは謎ですが、そのお話を読みながら、お母さんはいずれ空気がない層にまで達して窒息し、成層圏に出るところで摩擦熱にやられて燃え尽きてしまうのではないかと思っていた。なので、ラストシーンで、今まで空に落ちていったモノたちが全部戻ってくるとしたらちょっと違和感あるかも、と考えました。でも、この空間は宇宙空間ではなくて地変天異を起こした少女が作った空間だから…やっぱりみんな落ちてきて絶命しちゃう?下にいる人は?

とっても怖いラストでした。

この作品ですっかり菅原さんのファンになりました。

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隣町のカタストロフ 1

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[著]菅原敬太

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