幸福屋

『幸福屋』は姫神ヒロさんの作品。シドと名乗る謎めいた青年が幸福になるためのアイテムを授けてくれます。

代償はなし。シドはあなたに幸福になって欲しいのですよ、と言うだけです。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

幸福屋 姫神ヒロ 集英社

結果はいつも幸せになるとは限りません。たいていの少女たちはシドに言われた約束を破って、その結果不幸になります。

後半はメノウと名乗る美少年も現れ、意図的に少女たちを破滅に誘い込みます。

ありがちといえばありがちなこのお話。特徴はシドがわりと積極的に幸福アイテムを渡しに行くところです。一応店を構えていて、そこの張り紙を見て訪れる客もいるのですが、少女が何かを望みながら佇んでいるところにシドが現れて半ば強引に幸福アイテムを押し付けていったりすることもあります。

絵はきれいで、すこーしだけ古い感じ、と思ったら2007年に1巻がでていました。2巻の奥付には2008年、2012年とあったので、続巻は出ていないものと思われます。

姫神さんが1巻でご自分でおっしゃっているとおり、絵はお話によってちょっと変わっているかもしれません。1巻の最初で「若干古め?」とお持ったけれどすぐ気にならなくなるのは絵がかわっているのか慣れたせいなのかわかりませんが、いずれにしても好きな絵で、シドの服装なども好みでした。

契約ものに分類するには、代償がないところが足りないかもしれません。契約ものでは通常願いを叶えるために『地獄少女』では死んだ後の地獄行き、『呪いのシリーズ』では寿命、『邪悪のJACK』では魂、先日感想を書いた『猟奇伝説アルカード』では体の一部などを代償にすることを求められるのでそのことがお話の展開に関連してきたりしますが、ここでは幸福アイテムは完全にプレゼントとして差し出されます。『モニタリング闇サイト』が同じようなタイプの話かもしれません。

幸福屋の魅力はやっぱりシドとメノウです。美しくて意味ありげで、幸せを祈ると言いながらも、普通の少女だったら約束を破ってしまいたくなるような効果のある幸福アイテムを渡して、それで彼らが得るものが何かあるわけではなく、残念です、みたいな感じでお話が終わるところがちょっと癖になります。ただ、2巻で終わったのはもしかしたら、シド側に、幸福屋を続ける理由がなかったからかもしれません。シドにも目的があれば、フォーマットだけで終始するのではなく、違う展開がでてきたのではないかと思います。そのあたりは、姫神さんが表現したかった世界は何だったのかという根幹にあたり、このお話はこれでいいのだとは思いますが、せっかくメノウもでてきたので、もうちょっと読んでみたかった、という気持ちもあります。

唯一、幸福アイテムで代償をはらいつつも、自分にとって幸福とは幸福アイテムを使うことではなくて自分自身でいることだと気づき、幸せになる予感を見せて終わるお話がありましたが、その回の主人公の地味な少女が好みだったので、そのお話が幸福につながる話だったのは嬉しかったです。

最初に読んだ時は発行年を見ていなかったので、続巻がまた読めるだろうと期待してしまった漫画のひとつでした。

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幸福屋 1

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[著者]姫神ヒロ

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