宮月新さん原作、近藤しぐれさん作画の『シグナル100』を読みました。完結していたので一気に読むことができました。
スマホの小さい画面で表紙のサムネイルを見かけていて、あんまりキレイじゃないかも、と素通りしていましたが、よく見てみるとかわいい女のコのメガネの顔に血が飛び散っている絵で、俄然気になって読み始めました。
面白かったです。
この先は完全にネタバレしているので読んでない方はお気をつけ下さい。
学級崩壊の中、みんなバカばっかし、とさめている樫村怜奈。学級崩壊の原因はふがいない担任下部先生で、崩壊を先導したのはカリスマヤンキーの和田隼。限界に達した下部先生が生徒たちにあるビデオを見せる。そこには自殺衝動を誘発する100個のシグナルが仕込まれていた。後催眠というやつだ。その言葉を信じずバカにして先生を殴った生徒がさっそく「人に暴力をふるう」のシグナルにひっかかって自殺してしまう。震え上がる生徒たち。地獄で皆さんを待ってますと飛び降り自殺する下部先生。
自殺の描写がエグくてドキドキしました。Renta!で山ほどデスゲームやパニックホラーを見た後ではそうでもないのですが、これを読んだ頃はまだ慣れてなかったので自殺シーンにいちいち動揺してました。
二人目の自殺者は舌を噛み切って死ぬのですが、怜奈はその血をまともに浴びて、しばらく後に号泣するまで顔が血だらけでした。顔を洗うだけでも死んじゃうかもしれないという恐怖がよく現れていてよかったです。
クラスのヒーロー榊くんは自宅謹慎中だったので唯一催眠からは逃れたものの、下部先生はそれも計画に折り込み済で、榊くんは登校します。「学校の敷地を出る」というシグナルにひっかかって危うく全員死にかけたけど、下部先生の思惑どおり榊くんがそれを阻止して、恐怖に怯えながらひとりずつ死んでいくサイクルが確立します。学校から出れない生徒たちは大人を拒否して校内に残り、他の者に邪魔されない地獄絵図が始まります。生き残るための条件は、自分以外のクラスメイト全員の死を見届けること。
途中、朝比奈さんプロデュースコーナーがあったり、怜奈が榊くんの真心を疑ったり、気の触れる子がでたり、下部先生に別途後催眠をかけられた先生方が乱入したり、下部先生む の共犯者がいたり、シグナルが個人に割り当てられたりしたんだけど、最終的には怜奈と和田が残ります。
誰がを殺すなんて無理と言っていた怜奈ですが、最後には「死ぬなんて無理」と和田を滅多刺しにします。朝の光を浴びたら死ぬシグナルが割り当てられたはずの怜奈ですが、我にかえると思い切り朝日を浴びています。そして、別口の後催眠によって出現した下部先生のまぼろしによる解説で、怜奈は自分への催眠があることをきっかけに既に解けていたことを知り、さらなる絶望に打ちのめされます。生き延びるために和田を手に掛けたことも、怜奈を生き残らせるために榊がしたことも、そんな榊が死んだことも全部無駄だったのだから。
クラスメイト全員の死を乗り越えて生き抜き、強い信念を持って教師となった怜奈でしたが、担任するクラスは崩壊。職場は地獄と化しています。思い詰めた怜奈は下部先生と同じことを‥
デスゲームものの常で、はてなと思うところはありますが、一晩の出来事が4巻にきっちりまとまっていて面白かったです。怜奈はクラスメイトのことは冷たく見下してますが、別のクラスにちゃんと友達もいて、普通の高校生であることがわかります。クラスメイトも生き生きと描き分けられていて混乱することもなくみんなそれぞれ魅力的です。死ぬシーンはそこが見どころなのでしょうね。しっかり描かれていて、グロを見たい人はちゃんと満足できると思います。グロが苦手な方には向きません。
ずっと「私は誰も殺したくない」と言っていた主人公が、最後の一人になるために夢中で和田を刺すところ、好きです。殺したくないなんて、どこかで自分だけは死なないという根拠のない自信の裏返しで、本当に命の危機に陥ったらアッサリ翻ってしまう思いでしかないというのが、身勝手とかじゃなくて哀れな本性という風に見えて愛おしかったです。殺されちゃう和田はかわいそうだけど。主人公は強し。
ありがちかもしれないけど、そこまでして生きたのに下部先生と同じことをせざるを得ない怜奈の姿を見て悲しくなりました。
デスゲーム慣れした方だとまた違った感想があるかもしれないし、受け付けない方は一切受け付けないだろうけど、私はおもしろかったです。
このお話、橋本環奈ちゃんが主役で映画化されました。下部先生が中村獅童さんで、映画の特設サイトを見ると漫画とは先生は設定がかなり違う。ストーリー展開も違うみたいです。私はマンガを楽しんだので映画を見ておもしろいかどうかわかりません。よっぽど上手く作ってくれてないと「原作ではxxだったのにー」と言ってしまいますよね。
映画化されてビックリしたのは、映画化が決まって前日譚の『シグナル100 零』(宮月新さん原作、Ryukiさん作画)が発行されたあと、Renta!で購入済のマンガにオマケのページが追加されたこと。電子書籍だと後追いでコンテンツを変えられるんですね。新しかったです。