ドクムシ

八頭道尾さん原作、合田蛍冬さん画の『ドクムシ』は、人間で蠱毒を行う物語です。

これを読むまで蠱毒って知りませんでした。ツボの中に害虫を入れて闘わせ最後に残った一匹を使って呪術を行うものだそうです。蟲の場合はその虫を殺してターゲットに飲ませるとかするんだろうけど、人間の場合はどうするのかいまいちピンときませんでしたが、蠱毒には興味を持ちました。思った通り「蠱毒をやってみた」という動画をアップしているひとがいて、動画に見入っちゃいました。

ここから先はネタバレなのでお気をつけ下さい。

ドクムシ 画:合田蛍冬 原作:ハ頭道尾 双葉社

彼女が行方不明になった大学生のレイジが彼女の消息を人にたずねまくるところからお話は始まります。合田さんの描く人物はかわいらしくてレイジがイケメンなのか普通の男の子なのか、画面からは判別できません。彼女のマリやミチカに惚れられてるところを見ると、普通だけど清潔感のあるタイプではあるのかな、と思います。

レイジが意識を失ってから目覚めると、男女7人で廃校らしきところに閉じ込められていることがわかります。食べ物はなくて水は蛇口からそのまま飲めます。トイレはちゃんとありますが、机や椅子、ベッドはありません。あるのは監視カメラとおよそ7日間の時間をカウントダウンするタイマーと鍋と包丁とIHヒーター。ここにいる7人は皆意識を失っている間にここに連れて来られていて、監視者の目的はおそらく「僕らの殺し合い」だと、スーツを来たユキトシが言い出します。

最初に共感したのは7人が自己紹介するシーン。みんな名前をカタカナで言うのです。いつも漫画の自己紹介シーンをみていて漢字がすぐわかるのに違和感があったのでちょっとスッキリしました。と言っても、すべての漫画でカタカナで自己紹介して漢字をいちいち説明して欲しいわけじゃないですが。この漫画ではこの建物の中ではカタカナでやり取りしているのがとってもしっくりきました。

7人のキャラクターはすごくハッキリしていて覚えやすいです。人間の7つの罪を体現した7人だそうで、それぞれにバックグラウンドがあります。罪を抱える7人。ユキトシがいったとおり、殺し合いが始まる、というかユキトシがそう誘導して殺し合いになります。廃校の外で展開される物語から見ると、ある宗教組織が蠱毒を行うためにマリの父である刑事に人選を依頼したようで、それなりの人数が今回の蠱毒実施に関わっています。

主人公のレイジは、全然感情移入できないクズです。殺し合いが始まり、みんなそれぞれの思惑で破滅していき、殺人やレイプや食人などのグロい表現が溢れかえります。その中で読み進める原動力は、この蠱毒がいったいどうなるのか、次はどんな顛末で誰が死んでいくのかという興味と、生き残った人間はどんなおぞましい呪術に使われるかという興味。殺しのターゲットになるキャラについてはその罪が暴かれ、その内容にも興味をひかれます。私がいちばん衝撃だったのはユキトシの過去。かなり頭に残ってしまって時々思い出して「何だったっけ、このエピソード?」と自問自答したりしました。子供の時だったらトラウマになってたかも。

タイマーがゼロになっても蠱毒が終わらないのは想像していたので私はビックリしませんでしたが、登場人物もそれほどショックを受けていないように見えます。確かに、あと何時間我慢すれば開放されるはず、という希望の持ち方はせず、殺し合いに流されちゃってたのでそんなに気になりませんでしたが、緊張間に関連づけないなら、ストーリー上もタイマーいらなかったかも。

アカネちゃんはユキトシに見込まれただけあって魅力的だったと書こうと思ったのだけれど、ユミも魅力あった。百合の恋愛相手の先輩を殺したとかのバックグラウンドも衝撃だったけど、最初の殺しもレイジへの執拗な追い込みもよかったです。アカネは、罪人というにはかわいそうなバックグラウンドを持っていました。髪がながいときも短いときも好き。タイチは見た目も幼児趣向も受け付けなくて、何かいいところがあっても、と思いましたが、最初に食人に手を出すキャラとしてはそれでよかった。最初に殺されちゃうトシオのバックグラウンドや性格がやや薄いのは最初に殺されちゃうからあまり気になりません。ユキトシやミチカも好きで、お話的にも絵的にも満足しました。

5巻を読み終えたところで、表紙的なキャラ全員出ちゃったのに、6巻どうするんだろう?と思ったらマリちゃんだったので、そうきたかーと。

レイジが救出されてからもお話がつづくのね、と思ってたら、ラストはレイジの「蠱毒の完成だ」というセリフで締められていて、ああ、確かにそこまでがドクムシだったと納得しました。私の好みのラストでした。面白かったです!

と思って改めてRenta!に掲載されている他の方の感想を読んでいて初めて「完」のクレジットマークの後に1ページあることに気づきました!なんと、見落としていた。そんなことってあるんだ。続編がでてから追加されたわけじゃないよね?と疑心暗鬼になっちゃいました。

というか、ラストに満足したので、読んでいる途中で思ってた「生き残った人はどんな風に呪術に使われるの?」という疑問を忘れてました。ミチカも具体的に何をしたか教えてくれなかったし。

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【全巻セット】ドクムシ

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[著]八頭道尾 [画]合田蛍冬

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