『屍囚獄』は室井まさねさんの作品です。民俗学のフィールドワークのため山中の寒村を訪れる大学教授と助手、そして単位につられて同行する不真面目系女子大生たち。
教授が、民俗学に興味を持たない女子大生たちを連れてきたのには理由がありました。
ここから先はネタバレありで感想を述べていますのでご注意下さい。

この村では長年に亘って女児が生まれていません。そのため、近隣の村や旅の者などを襲って村に連れ込み、男性はなぶり殺しにし、女性は村中で慰みものにしていました。
女もそのままでは逃げ出そうとします。そのため、手足をきり落としていたので、ほとんどの女は切り口に虫が湧き、腐り果てて毒が全身に回り、死んでしまいます。それらの女たちは村の中の穴に埋められます。村長の妻とされた女は手当をされるのか生き残り、名を宇受売(うずめ)に変えられて家に置かれ、村中の男に犯され続けて子を産み、産んだ子供らが成長するとそれらにも犯され孕まされていました。
この風習から宗教が生まれたのか、村には男根を模したオブジェを神像とする猿田彦大神と、木の洞を女性器に模した宇受売神を奉る神社があります。
教授は閉鎖的な村になんとか入り込み、若い女性たちを提供することと引き換えに研究の調査を許可してもらったのでした。
女子大生たちは単位目当てに来ているだけで、民俗学にはほぼ興味ありません。決して全員が仲良しなわけでもなく、助手は彼女らにも、彼女らをわざわざ同行させた教授にも若干苛ついています。
一行は村長の家に滞在していますが、家は古く、トイレも古式です。耐えられない、と苛立つ女子大生を「ウォッシュレットがあるから」と自宅に誘う男。トイレから出た女子大生をレイプしようと襲った男は、猿田彦神の面をつけた男に、斧で頭を砕かれます。そこから、小さな村の中で次々に人の命が失われます。

この作品を最初に読んだのは、私がデス系にハマっていた頃で、当然のようにオススメにあがってきていたもののひとつです。女子大生が人心的にも地理的にも閉鎖された村に何の予備知識もなく入り込み、そこで血みどろの事件が展開され、、、というお話で、その頃の私にとっては「ああ、またこんな感じ?」程度で、1巻を読んで「まあ全部読まなくてもいいかな」という気持ちでした。当日読んでいた女子高生がでてくるデス系に比べて6人の女子大生の関係性が淡白なところが気に入ってはいました。
最近ふと「あなたへのオススメ」にあがっていて、作者が室井さんなことに気づきました。室井さんは『煉獄女子』でハマり、『狂触人種』も読んでいます。いまは『肉茎の生じる村にて』を連載中です。結構絵柄が変わる作家さんのようで煉獄女子のときの絵柄が最高に好きですが、この作品の絵柄も好きです。室井さんの作品なら、ちゃんと最後まで読んでみよう、と、改めて全巻読んでみました。
村長には2人の息子がいて、体格がよく顔が化け物で知的障がいのある伊助と、気が弱そうなイケメンの貴彦がいて、貴彦は、屋根裏部屋に閉じ込めている美少女を育てています。伊助は年齢不詳、貴彦は20代半ばぐらいに見えます。対して村長は60がらみに見えて、貴彦の父としてはちょっと年寄り過ぎに見える気はします。伊助は病床にある母親の面倒をよく見ているのですが、モチロン、女子大生たちは佇まいの不気味さから、伊助には若干の警戒心を抱いています。一方、病床の母親(実際は、手足を切られて動けない)は、80過ぎの老婆に見えます。多分、繰り返される陵辱と度重なる出産で年齢以上に老けてしまったのでしょう。
彼女は話が進んだところで村長から「子供も産めないお前にもう用はないわ」と罵られ、多分自分の産んだ子供である村人から「若い女が7人(6人の女子大生と助手)も来たから、腐ったババアを抱く必要もなくなった」とバカにされています。本当にとんでもない人生だったことでしょう。不気味な伊助だけが、彼女を母と慕って本気で大切にしていたことが後にわかります。
疑問なのは、彼女は長らくみんなの慰みものになっていたのに、なぜ伊助と貴彦だけが「村長の息子」と、村長から認識されているかです。村長は6人の女子大生の中から、清楚系で素直な性格で料理もできる美琴に目をつけて「貴彦の女だけは他の村人と共有させない」と心に誓っているので、もしかしたら貴彦の母親も、貴彦を産むまでは村長だけが独り占めしてたのかもしれません。
とにかくたくさんの人が死にます。味方と思われる人物が出てきても安心できません。ショートカットがかわいい助手の香坂先生は中盤大活躍して、民俗学愛も見られて魅力的で、村からの脱出を主導しそうですが、主人公ポジションはあっさり美琴に移ります。
美少女のうずめは、純真無垢な子供かと思いきや、彼女も一筋縄ではいかない存在で、村から救い出される美琴に、決定的なダメージを与えます。
当時私へのオススメには、『辱』や『サタノファニ』のような、かわいくて胸が大きくて、男性の劣情をそそる女性たちが、閉鎖的な空間でエロいことをしながらグロいこともするような作品がいっぱいあがっていました。どれだけエログロにハマってたんだよ、アタシってば、と思って改めて購入履歴をみてみると、意外にも特にエログロな傾向はなくて、むしろRenta!利用初期は、ちゃおに掲載されていたような、本気の少女向けの少女漫画ホラーを好んで読んでいたことがわかりました。自分のことなのに、人の記憶ってあてにならないですね。多分、単純に当時、ロリ系爆乳のエログロが流行っていたのでしょう。
ちなみに、『サタノファニ』は山田恵庸さんの作品で、1巻が2017年6月付で発行されていて、2026年初頭の今の時点で35巻が発行されている人気作品です。でも、冒頭で主人公が女性のセンパイにハメられて複数の成人男性にレイプされる(未遂なのかも)シーンがあり、センパイと男性たちがねちこくて気持ち悪すぎて、私は読み進めることができませんでした。あと、主人公の純真無垢さを表現するために、風にあおられたテイで男性にパンツを丸見せするシーンがあります。現実の女子は、短いスカートと太ももを見せるのをカワイイと思ってはいても、当然パンツなど誰にも見られたくなくて注意してるのが普通なので、風ごときで「うっかり」パンツを見せちゃう女子はもれなくあざとエロ系で、わざと見せています。それは主人公キャラのせいじゃありません。作家さんの「天然女子への願望」が見えて、それもそれでキモイです。人気作品なのできっと面白いんだろうけど、嫌悪感が先に立ってどうしても読めない残念な作品です。
話を『屍囚獄』に戻して、この作品も「女子大生が陵辱されるのかー。気が重いなあ。でも、室井先生の作品だしなあ」と思って読み始めました。実際、女の子たちは度々レイプされそうにはなるのですが、レイプは必ず未然に防がれます。それにはちゃんと理由があります。でも殺人は山ほどでてくるし、その描写もとってもグロテスクで、頭を横にかち割るとか、普通に描写されています。逆さ吊りにされて殺される村人もたくさんいます。レイプ以上にそれがキライで読み進められない方もいっぱいいるはず。
ちなみに、Youtubeでは、世界の拷問をコンテンツとして扱った動画もいっぱいあります。逆さ吊りというのは、ものすごく苦しくて、残忍な処刑方法のひとつだそうです。フランス革命前夜で「人道的な処刑具」としてギロチンが発明された、というのが、子供の頃にはよくわからなかったのですが、確かに、苦しみを長引かせないため(そして短期間により多くの人を処刑するため)の、画期的な方法だったんですね。AIに聞いてみたところ、いま世界の法治国家の死刑は、絞首刑と致死注射がほとんどみたいです。米国では電気椅子が選択肢のひとつにはあっても今はほとんど執行されてないみたいです。Youtubeを見てると、中国は銃殺してるイメージがあるけど、今はほとんど致死注射で、1990年代、2000年代の特に地方で銃殺処刑の画像や映像がネットに残ってるから、中国は銃殺ってイメージが残っちゃってるんだそう。「中国で極悪非道な金持ち若者が最終的には銃殺された」って動画を時々見かけるんだけど、あれってフェイクなんですね。
ああ、また話題がすごくそれてた。とにかく、何度も繰り返すとおり、ばんばん人が死ぬ本作ですが、うずめと美琴の顛末が最も衝撃です。それを目撃してしまうひとたちの表情が秀逸。美琴が何を言っても、きっと信じてはもらえないだろうなー、という絶望感。やっぱり、私は室井さんの作品が好きなんだなー、と思います。
ラストはオカルトオチです。このオカルトオチはどうなのか、とも思いますが、物語をキレイに終わらせるのには秀逸だと思います。やや唐突感はありますが、ちゃんと伏線も張られているし。「このあと主人公はいったいどうなるんだろう」とか考えるのではなく、物語をバッサリと終わらせるタイプのラストでした。