リターン 漆黒のゴーストリカ

『リターン 漆黒のゴーストリカ』は、原作 五十嵐貴久さん、作画 玄田げんたさんの作品です。富士高因さんが作画、五十嵐さんが原作の『リカ』の続編です。前作で顔のパーツを切り取られて連れ去られた本間孝雄の遺体が見つかったところから話が始まります。

梅本尚美はコールドケース捜査班に所属する刑事。前作でショックのあまり精神に異常をきたした刑事、菅原の直属の部下でした。あれから10年経っています。

ここから先はネタバレなのでご注意下さい。

リターン 漆黒のゴースト リカ
リターン 漆黒のゴースト リカ

リターン 漆黒のゴースト リカ

[作]五十嵐貴久 [画]玄田げんた

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尚美は同僚の孝子や捜査一課三係の次郎とともに捜査に入ります。次郎と孝子は結婚の約束をしています。次郎はひとりで出会い系サイトにあたり、リカにたどりつきます。次郎と連絡が取れなくなったのを不審に思った孝子が尚美に声をかけて一緒に次郎の家を訪ねると、次郎は生きたまま顔のパーツを切り取られた後で首を切られて死んでいます。

尚美と孝子は、自分たちでリカをおびき寄せることを決めます。リカを調べ尽くした尚美は、孝雄からのメールを装ってリカとのやり取りに成功し、リカを高円寺の駅に呼び出します。尚美はここで上司に報告して応援を求めますが、早朝のため人員を十分にてはいできず、尚美は確保するつもりだったリカに逆に捕まります。

気づくと尚美はリカの部屋にいて拘束され、太腿をめちゃくちゃに刺されています。目覚めたリカは孝雄の居場所を教えろと尚美に迫り、尚美の目玉をくり抜いて拷問します。そこに孝子が現れ、リカを撃ちます。何度撃たれても致命傷を負わなかったリカですが、頭を撃ち抜かれてさすがに絶命したと思われます。

尚美は精神科の病室にいる菅原に報告します。菅原の親戚が群馬に菅原を移したいと言っていると聞き、自分が親戚を説得して菅原を引き取る、と医師に宣言します。もうまともな意識がない菅原を、自分が好きなように看護できる幸せを感じる尚美の目は、リカと同じ漆黒の眼差しになっています。その部屋のドアノブに、死んだはずのリカの手がかかり…

『リカ』同様、『リターン』の原作も読んでいます。原作ではリカは今度こそ死んでいて、でも尚美が、菅原の意志と関係なく菅原を好きにするようになるラストに戦慄したような気もします。

玄田さんと、前作の作画である富士さんの絵の傾向は私にとってはかなり違うように見えるので、読み始めはちょっとだけ戸惑いましたが、発見された孝雄の無惨な姿など、インパクトのある絵が続き、あっさりと玄田さんのつくる『リターン』の世界に入ることができました。

リカの姿は前作より、さらに人間離れした恐ろしい存在になっています。口から銃を押しつけられて発砲されたので、脳みそも破壊されているのではないか、と思うのですが、それでもしっかり生き残っているところは、さすがリカです。

前作は、リカに付け狙われる恐怖のはなしだったので、リカをターゲットにした刑事である尚美がリカとの駆け引きをする今回のお話は、続編で、リカという同じ人物を扱いながらもまったく違うお話になっていてとてもよかったです。

リカの表現が暗くて、リカの目のあたりが黒い影になっていて表情が読み取れないところもとってもよかったです。ただ、好みでいうと、リカが「リカは悪くない!」と叫ぶシーンのリカがかなりたくましいので、スラッとした儚げな雰囲気がある方が好きです。でも実際、リカはひとりで男性を運んだりできるので、たくましい女性であるほうが理にかなっていますが。そして、そのシーンそのものは、リカの本質を表していて、とってもよいシーンでした。惨忍な殺人をくり返しているリカですが、その根底にはいつも「リカは悪くない」が流れているのですね。画面構成など、とっても好きでした。

ラスト、尚美がリカと同じ本質を見せるところは、原作でもゾッとしましたが、漫画でも巧みに表現されていて、ゾクゾクしました。

リカが訪ねてくるラストは、尚美へのゾクゾクが相殺されてしまうので、好みとしてはない方がよかったですが、原作と違うラストを設けるという意味では悪くはないと思います。

原作を読んでいても満足できる良作でした!

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