EXIT

『EXIT』は石川オレオさんの短編です。スナオは自他ともに認める怖がりです。スナオもそんな自分はイヤですが、いかんともしがたく毎日を過ごしています。

ただ、スナオは何でも怖いわけではなく、たとえばホラー映画は平気です。スナオが怖いのは自分を巻き込む系の事件です。

ここから先は、完全ネタバレで、私なりにあらすじをまとめ、そのあと感想を述べています。ご注意下さい。

そんなスナオの前に、自分は天使だと名乗るヨージが現れます。ヨージは人間がピンチから脱するときに出す「EXIT波」を集めていると言い、スナオに協力を求めます。スナオは周囲50m以内の危機をすべて呼び寄せるバングルを装着されます。ヨージがスナオに頼ったのは、スナオには危機を察知する能力があるからです。ヨージは協力するお礼に、スナオのビビリを治すと言います。

スナオはその力を発揮してあらゆる危機を脱します。その中で、過去の自分が、クルマの火災事故にあったとき、危険の予測ができたのに、幼かったせいでその危機から両親を生還させられなかったことがトラウマになっていたことを知ります。

トラウマを克服したいスナオは、たまたま見かけた自動車事故で能力を発揮し、死にそうだった人を助けます。その経験を経たスナオは、ビビリを克服するのにもうヨージの手は借りません。自分で一歩一歩進んでいこうと決心したのです。

石川オレオさんは、『黒脳シンドローム』ではまり、『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』でドハマリし、今は連載ふたつを読んでいます。

まず好きなのは絵です。主人公のスマートなところもよいし、女性のちょっとおどおどしているところや、白抜き系短髪男性のちょっとふてぶてしい感じも好きです。目の下の外側に線を重ねているので、おどおど系女性のときにはクマっぽく見えるのも好きです。オリジナルでも原作つきでも、ハラハラするストーリーも好きです。短編集がでているということで、張り切って読みました。

主人公が14歳の学生で、ちょっとひねくれているっぽいファーストカットから、実は無類の怖がりというコミカルな設定や、主人公のもとに「天使」が現れるという展開は、既視感もあり王道の少年漫画といった雰囲気ですが、王道なだけあってワクワクします。そして、スナオの身体能力にビックリです。

スナオは危険を察知する能力があり、それをヨージに見込まれるのですが、すごいのは察知した危機をすばやく交わす能力です。ヨージのスポーツカーに襲われれば、とっさにボンネットに飛び乗り、その上でバランスをとる、ぐらいのことは余裕でできてしまうのです。画面にはスナオが危機から逃れるシーンが連続して表現されるので、とても躍動感のあるカッコイイ画面になっていて、石川さんの画力にうなってしまいます。きっと楽しんで描いていらっしゃるんだろうなー、と思い、読んでいてとても楽しくなります。

自分の過去、危険を察知できるだけでなくそこから逃れる術も知っていたのに、事故のときに両親を助けられなかったことがトラウマであると気づくシーンも説得力がありました。だからこそ、目の前の事故で命を失いそうになっている人を見捨てることはできない、と奮闘するところはとっても自然だったしかっこよかったです。

必死で「安全な出口」を探すところの描写は、わかりやすくてキャッチーでとても好きです。ここもだめ、ここもここも、じゃあどこだ!?と焦りながらも、矛盾して冷静にEXITを探すスナオがメチャクチャかっこよかったです。

派手に人助けをしたことでクラスメイトにも見直されるスナオ。本来であれば、十分なEXIT波をゲットしたヨージに、怖がりを治してもらえるところですが、スナオは断ります。天使の超能力で何かしてもらうのではなく、しっかり自分と向き合っていきたいと思ったからです。これも少年漫画としては王道な少年の成長過程だと思いますが、王道だけにしっくりきてよかったです。

『結婚記念死』や『異常死体解剖ファイル』では、どちらかというとじっくりした恐怖を描いている石川さんですが、短編ではこんなにも躍動感のある作品を描いていらっしゃるんだと感動した作品でした。

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