久しぶりに、漫画の感想ではないブログです。
相変わらずどっぷりYoutubeを見ているので、テレビではあまり取り上げられない、ネットで炎上している話題によくふれる。最近だと「有名Youtuberのヒカルさんと進撃のノアさん夫妻が、お互いに不倫オッケーを発表したが、その際にノアさんが納得していなさそうだったのでヒカルさん炎上した」「旅系YoutuberのBappa Shotaさんがウイグルに行った動画を上げたあと沈黙が続き、さらにその後炎上に呼応する形でアップした投稿が不自然なので炎上してる」などがあり、炎上の兆しが見えると便乗して視聴回数を伸ばそうとするYoutuberが雨後のタケノコのように現れるのだった。
私は旅系に好きなYoutuberさんが結構いて、Bappa Shotaさんもそのひとりだ。だからすごく心配している。最初は、Shotaさんはいままでも、命を落としてもおかしくない取材をしており、いつ何が起こっても不思議ではなく、ご本人も覚悟の上で活動されているはず、と思った。だが、炎上してから出された動画やインスタなどがあやしい(ご本人があげたものではなく、ディープフェイクが使われている)との検証動画がいっぱい出て、私もわけわからなくなっている。早く無事を確信したい。
すごく悲しかったのは、Shotaさんと近い時期にウイグルに行き、無事に帰ってきているSU Channelさんについて「中共の工作員」と思わせるようなサムネを「ジャーナリスト」を名乗る方がアップしていることだ。SUさんの旅動画も好きでよく見ている。私には、SUさんが特定の国、組織、団体の工作員などではなく、SUさんの視点で自己責任で旅をしているとしか思えない。なので、ジャーナリスト氏の誹謗中傷まがいのサムネには怒りしか覚えない。
ここ数日、往年の漫画好きにとって非常にかなしい炎上もあった。経緯は以下のようなものだ。
①江口寿史さんが、インスタで見かけた写真をほぼトレースした作品が、企業の企画のキービジュアルとして使用された。
②元の写真の投稿主(被写体として肖像権がある、しかもプロのモデルである。写真自体は撮影した方に著作権があるのではないかとおもわれるが、撮影の条件によっては著作権も彼女にあるかもしれん)が企業に問い合わせた。その結果、トレース元であると正式に認められ、モデル料を得た。
③江口さんがその経緯を端的にXで報告した。その際、このお嬢さんも頑張っているようだから応援してやってくれ的ニュアンスが感じられた。
④モデルさんが、江口さんのポストにオトナの対応をしながらも自分の権利についても触れた。
⑤過去に江口さんは「トレースは漫画文化を破壊する」的発言をしたこともあり、ネットが炎上した。その過程で、別の男性モデルさんが「7年ぐらい前に自分も無断トレースを商業利用された」とポストした。その後、江口さんの作品について続々と「トレース元写真」が発見されている。中には江口さんの画力を疑問視して中傷するコメントもあった。
⑥有名イラストレイターさんたちが江口さんの画力を称賛する投稿をした。これは「話題の本筋は画力ではない」としてネット民の反感を買った。
⑦江口さんを起用していた企業が続々と「江口さんに依頼し公表した作品の制作過程に問題があった可能性がある」として謝罪し作品の公開を差し止めている。

私は小さい頃はほぼ、少女漫画に集中して読んいた。少年漫画は、従姉妹たちの家で読む「恐怖新聞」と「後ろの百太郎」、従兄弟の家で読む少年誌の「サーキットの狼」と「野球狂の詩」が印象に残っている。その後「ドカベン」にはまり、「うる星やつら」「みゆき」「タッチ」のヒロインらにイライラしたりしていた。「すすめ!!パイレーツ」を読んだときはまったく新しい世界を感じショックを受けた。猿山さるぞうに影響されたキャラを自分のなぐり書き未完成漫画に出して友に引かれた。「ストップひばりくん」はしっくりこなかったが、アニメは好きだった。
小学生の頃に少女漫画、特に長期連載ものを読んでいて気になるのは、キャラたちの衣装だった。小学生にして自分のファッションセンスのなさを自覚していたので、漫画家であるということは服飾デザイナーでもあるということだ、と絶望した。「クルマもデザインできないといけない」「建物も」「街並みも」「家具も」「家の内装も」「小物も」と、絶望は深まるばかりだった。
そこで、少しでもセンスを磨くために、ファッション雑誌を模写したり、TVで海外モデルのランウェイを観て描き写したりしたものだ。女優さんの顔写真を写したり、建物を描いてドーリア式、イオニア式、コリント式、などの柱も模写していた。だから模写の必要性はわかるし、模写で気に入ってしまった構図を無意識に描いてしまうことがあるのは理解している。
デジタル世代の作家さんは、連載前に主な舞台となる主人公たちの家や風景に繰り返しでてくるビルを3Dでしっかるデザインして、シーンに合わせてレンダリングしてたりで、楽なのか大変なのかもはやわからない世界だ。先日テレビで、かの名作「童夢」が取り上げられていたが、大友克洋さんの背景は、わざと焦点をずらしたり、正確なパースで描いた背景を上下逆に使うことで違和感を演出して画面の広がりや迫力を出していたことを知った。これは手描きならではの表現だったのだろう。デジタルではできないかもしれない。でも、デジタルはデジタルでいろいろと新しい工夫ができそうだ。
アナログでもデジタルでも、漫画にはまだまだ無限の表現手法があると私は思う。デジタルネイティブの若手は新しい発想と技術で新しいストーリーを描き、ベテランはベテランで、老眼鏡をかけながらも、確かな技術と経験で、若手には思いもよらない手法で魅せてくる。
そんな風に思っていたので、おしゃれなイラストの大御所である江口さんが、ネットで公開されていたりファッション誌に掲載されたりした「他人の作品」を、トレースしたてコラージュしたものを、著作権者のクレジットもなしに堂々と商業作品として発表していて、しかもそのことを恥じないという現実がショックだった。
イラストレイターさんや漫画家さんが江口さんを擁護する一方、企業はいち早く反応して公開を取りやめているのが興味深い。事情は分からないが、江口さんが数日間沈黙しているのはおそらくもろもろ整理できる前に発言するわけにいかなくなっているのだろうと想像する。
私が最も悲しいのは、私がかつて絶望した「ファッションセンスがないと漫画家はできない」という側面から見たときに、大御所である江口さんが、おそらくファッションのあるラインをクリアしているであろう、プロのスタイリストさんに監修されたプロのモデルさんをプロのフォトグラファーさんが撮影し二次元化されたデータから、ファッションと着こなし、ポージング、アングルを、江口さんが盗用し、盗用したとの意識がまったくないことだ。そこにアタマを使わないときに、その人をクリエイターと考えることはできるだろうか。さまざまな検証から、江口さんの「作品」は、インスパイアでも模写でもなく、トレースとコラージュから成り立っているように思える。それを同業者たちが擁護するのは思考停止に思える。
江口さんの描く、特に女のコの顔は確かにかわいい。私も好きだ。だからといって、服飾のコーディネートやポージングやアングルをソックリ写して(多少等身バランスを非アジア人に変えたとしても)、顔だけ江口さんの絵にするって。身内では「さすが巨匠!」で通っても、一般通念では通らない。今回きっかけになったイラストは、顔もほぼモデルさんそのままだ。むしろ変えてるところはダメ出しみたいで失礼だ。企業が仕事を依頼したときには、よもや著作権侵害前提の作品が納入されるとは思ってなかっただろう。もちろん企業が甘くて、もし入っていないなら契約に条項をいれるべきだ。いや、普通は入ってると思うけどなあ。漫画家さんとの架け橋を専門にしているエージェンシーさんはまだそんなに歴史が長くないから、入れてなかった、ということはありそうだ。
とにかく、クリエイターが、自分の作品でお金儲けをしておきながら他のアーティストの権利の侵害には無頓着だというのはとても残念だ。